「脱原発都市」にメガソーラー、35億円で2700世帯分の電力を:自然エネルギー
福島第一原子力発電所から20キロメートル圏内にある南相馬市の農地で、発電能力が8MWを超えるメガソーラーの開発プロジェクトが進んでいる。現在も立ち入りが制限されている避難指示区域内の2カ所に建設する計画だ。35億円にのぼる総事業費を地元の金融機関も加わって支援する。
福島県北部の太平洋沿岸にある南相馬市では、東日本大震災で津波による甚大な被害を受けたうえに、福島第一原子力発電所からの放射能汚染によって広い範囲が避難指示区域に指定されている(図1)。市の南部に広がる農地の多くが避難指示区域に入っていて、そのうちの2カ所でメガソーラーを建設するプロジェクトが動き出した。
建設予定地は「小高区(おだかく)」の丘陵地帯にある18万平方メートルの農地で、もともと畑として使われていた。この一帯は住民が早期に帰還できる環境整備を目指す「避難指示解除準備区域」に含まれていて、復興に向けた支援策を迅速に実施する対象になっている(図2)。
2014年度に始まった「懸の森(かけのもり)太陽光発電事業」を通じて、2カ所の農地に合計で8.6MW(メガワット)のメガソーラーを建設する。1カ所は2016年3月に、もう1カ所は2018年12月に運転を開始する予定だ。両方が稼働すると、年間の発電量は一般家庭の使用量に換算して2700世帯分になる。南相馬市の2万3000世帯の1割強に相当する。
プロジェクトを推進するのは「懸の森太陽光発電合同会社」で、約35億円の事業費を投じる計画だ。2014年度に被災地を対象にした「再生可能エネルギー発電設備等導入促進復興支援補助金(半農半エネモデル等推進事業)」の交付を環境省から受けた。この補助金を使って売電収入の一部を農作物の栽培に生かすことになっている。
さらに第一生命保険と損害保険ジャパン日本興亜から4億2000万円ずつ、地元の福島銀行から2000万円の出資を受けることが8月3日に決まった。このほかにも大和証券が主幹事になって、地元の金融機関が協調融資に参加する。再生可能エネルギーの導入を通じて、避難指示解除準備区域の復興に地域を挙げて取り組む体制ができあがった。
南相馬市は2015年3月に「脱原発都市」を宣言して、原子力に依存しない街づくりを推進中だ(図3)。2030年までに再生可能エネルギーによる電力の自給率を100%に高める目標を掲げていて、太陽光と風力を中心に導入拡大策を展開していく。
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