夏の電力需要が減り続ける、7月は2年連続で3.1%減少:電力供給サービス
今年の夏も蒸し暑い日が続いたが、それでも電力の需要は減っている。電力会社10社が7月に販売した電力量は前年から3.1%の減少になり、2年連続で3%を超える減少率だ。オフィスで使う業務用が5.7%減と大きく落ち込み、家庭用も2.3%減少した。節電の効果が着実に高まっている。
2015年7月の販売電力量は10社の合計で659億kWh(キロワット時)にとどまり、6月と比べても8%しか増えなかった(図1)。前年比では3.1%の減少で、4月に1.0%だけ増えてから再び減少傾向に入った。
用途別では家庭を中心とする「電灯」が2.3%減、オフィスで使う「業務用」が5.7%減だった。工場などが利用する「産業用」も2.1%減った。特に業務用と産業用は2014年5月から15カ月連続で前年を下回っている(図2)。
集計した電気事業連合会の分析では、気温が前年に比べて低めに推移したために、冷房による電力需要が減少した。とはいえ1年前の2014年7月も同様に前年比で3.1%減少していて、理由も同じ気温の低さを挙げている。温暖化が進む中で、7月の気温が全国的に下がり続けることは考えにくく、節電の効果による需要の減少と見るのが妥当だ。業務用や産業用では新電力の販売量が増えている面もあるが、家庭用には影響がない。
全国の販売量の3割を占める東京電力管内の需給状況を見ると、7月の最大需要は27日(月)に記録した4729万kW(キロワット)である(図3)。1年前の2014年7月は最大需要が4795万kWだった。需給率は14日(火)に93%まで上昇したのが最高で、90%以上になったのは1カ月のうち6日間だけだ。
他の地域でも需給状況が厳しくなることはなく、例によって夏の予備率(最大需要に対する供給力の余裕)が3%まで低下する見通しを出していた関西と九州でも、予備率が10%を切ることさえ1度もなかった。予測と実績のかい離は著しく、電力会社の分析能力が問われる。
8月も同様に安定した需給状況が全国で続いている。原子力発電所を再稼働しなければ電力を安定的に供給できない、という理屈はもはや通じない。企業や家庭の節電効果で原子力の運転停止による影響をカバーできている。
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