2014年度の販売電力量は前年比3.0%減、1999年以来の低水準に:電力供給サービス
小売全面自由化を1年後に控えて、電力会社の販売量が減り続けている。全国10地域の電力会社が2014年度に販売した電力量は前年と比べて3.0%も減少して、4年連続で前年を下回った。しかも15年前の1999年度の販売電力量と同じ水準まで落ち込んだ。特に家庭とオフィスの減少が目立つ。
2014年度の販売電力量は10社の合計で8230億kWh(キロワット時)にとどまり、前年度から255億kWhも減少する結果になった(図1)。過去をさかのぼると、1999年度に8168億kWhを記録して以来の低い水準だ。集計結果をまとめた電気事業連合会は、天候による冷暖房需要の低下を理由に挙げている。それよりも東日本大震災を機に電力市場の構造そのものが変化した影響のほうが大きい。
電力会社の販売電力量は2011年度に5.1%も減少した後に、2012年度は1.0%減、2013年度は0.4%減と少しずつ縮小してきた。過去2年間は2011年度の反動もあって減少率は小さかったが、震災から3年が経過した2014年度は再び減少傾向が加速した状況だ。家庭と企業の節電効果が継続的に高まってきたことに加えて、企業や自治体が新電力に移行する動きにも弾みがついている。
用途別の販売電力量を見ると、家庭を中心とする「電灯」が前年度と比べて4.0%減少した。企業や自治体がオフィスで利用する「業務用」も同様に4.0%減っている。これに対して工場などが利用する「産業用その他」は1.3%の減少にとどまった。
産業用のうち電力を大量に使う7つの業種の中では、アルミニウムなどを製造する「非鉄金属」が4年ぶりに増加に転じている(図2)。このほかに市場が大きい自動車メーカーや電機メーカーを含む「機械」は前年度から0.4%しか減らなかった。生産量が増加して電力の需要を押し上げている。
ただし工場の節電対策が家庭やオフィスほど進んでいないことも要因の1つと考えられる。工場では大型の設備が数多く稼働していて、老朽化している機器も少なくない。高効率の省エネ設備に切り替えるには多額の資金が必要で、中小規模の製造業では負担が大きい。
このため政府は2014年度の補正予算で930億円を確保して、工場などに省エネ設備を導入するための補助金制度を新設した。工場で高効率の機器が増えていけば、産業用の電力需要は減っていく。2016年度には小売全面自由化も始まり、電力会社の販売量が回復する可能性はますます小さくなる。
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