10年間で需要が減っていく東京電力、増える予想は関西電力など7社:電力供給サービス
電力会社が策定した2015年度から10年間の供給計画を見ると、従来のような楽観的な需要予測ばかりではなくなってきた。東京電力は2024年度までの販売電力量が年平均0.6%の割合で減っていくと予想している。2016年度に始まる小売全面自由化で競争が激化することを織り込んだ。
電力会社は今後10年間の供給計画を前年度末までに国に届け出ることになっている。2016年度からは事業者の区分が発電・送配電・小売に再編されるため、現在の形式の供給計画は2015年度が最後になる。これまで各社は発電と小売を合わせて楽観的な見通しを出し続けてきた。いち早く現実を直視した計画に転換したのが東京電力である。2015年度から10年間の販売電力量をマイナス成長で予想した。
2014年度の販売電力量を考えれば、東京電力に限らずマイナス成長を想定するのが現実的だ。10社すべての販売電力量が2013年度よりも減少する見通しで、2015年度以降も増加する要因は見あたらない。にもかかわらず2015年度には全社で販売電力量が増える計画になっている(図1)。
景気の回復による電力需要の復活を期待してのことだ。しかし電気機器の消費電力が今後も低下して、新しい技術を生かした節電対策が進展することを想定すれば、無理な期待と言わざるを得ない。さらに2016年度からは小売全面自由化によって、顧客が新電力に移行する勢いは加速する。
東京電力の場合には10年後の2024年度の販売電力量が2015年度と比べて4.3%減る予想だ。年平均ではマイナス0.6%になる(図2)。これでも節電効果と小売全面自由化の影響を過小評価している可能性がある。電力の需要が大きい首都圏では、新電力が安い価格で参入して数多くの顧客を獲得することは確実である。
同様にマイナス成長を予想しているのは四国電力だけで、中部電力は0%成長を見込む。残る7社は2024年度に向けて成長を続ける計画である。2014年度に販売電力量が一気に4.3%も低下する関西電力でさえ、今後は年率0.2%の成長を想定している。最大電力はマイナス0.1%の成長率だが、それでも2024年度には2014年度を上回る。
こうした需要の見通しをもとに、各社は発電所の開発計画を推進していく。供給力が過剰になる懸念はぬぐえない。ただし新設する発電所は水力とLNG(液化天然ガス)火力が中心で、一部の地域に石炭火力と石油火力が加わる程度である。東京電力の電源開発計画を見ると、揚水式の水力が2カ所、LNG火力が新設・増出力を合わせて5カ所で進んでいる(図3)。
一方で最大電力が低下していくことから、燃料費の高い石油火力を順次廃止する。関西電力では石油火力をLNG火力や石炭火力へ転換する計画もある。原子力が再稼働しなくても、需要に見合った供給力は十分に確保できるうえに、燃料費やCO2排出量も削減できる。おそらく2016年度には現実的な供給計画が多くなる。
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