“空飛ぶ風力発電”に三菱重工らが出資:自然エネルギー
三菱重工業とオマーンの財閥企業であるSBGは、米国のベンチャー企業であるアルタエロス・エナジーズ社に出資することを発表した。アルタエロス・エナジーズ社が開発した空中浮体式風力発電設備の商用化を支援するためだという。
今回出資の対象となったアルタエロス・エナジーズ社(Altaeros Energies、以下アルタエロス社)の「空中浮体式風力発電設備(Buoyant Airborne Turbine、以下BAT)」は、空中に浮かんだ状態で風力を利用した高効率な発電が行えるという技術。加えて、電気通信などの監視・観察、セキュリティサービスなどを、遠隔地や送電網が未整備な地域に提供することができる多目的な技術プラットフォームとしても注目されている(図1)。
送電網のない地域での活用に期待
具体的には、BATはヘリウムガスを充填した外郭を持って地上約600mの高さに浮上し、安定した強い風を定常的に受けることで、同規模の従来型風力発電設備に比べ2倍超の電力量を発電することができる。また、トレーラーによる運搬の後、素早い設置が可能であるなど、遠隔地に向けた積み出しや据え付けが容易であるという利点もある。
このため、送電網のない地域や島しょ部、へき地、さらには災害地域などでの電力供給に適しているとされ、これら地域で多用されているディーゼルエンジンによる発電に比べ、強いコスト競争力を持つと期待されている。
三菱重工業とオマーンの財閥企業であるスヘイル・バーワン・グループ(Suhail Bahwan Group:SBG)による出資は、このBAT技術の開発と商用化を支援するためのものだ。アルタエロス社CEOのベン・グラス(Ben Glass)氏は「世界では10億人超の人々が今も安定的な電力供給を受けることができず、30億人超の人々がインターネットにアクセスできない状態が続いている。三菱重工業とSBGをパートナーとして、この世界的な難問解決に挑戦していく」とコメントしている。
2014年12月にソフトバンクも出資を発表
Altaerosは2010年にマサチューセッツ工科大学で設立されたベンチャー企業。同社が取り組む新しい風力発電技術の開発プロジェクトには、米国農務省や米国立科学財団をはじめとする数多くの政府・地方政府機関や有力企業が支援を表明している。また、2014年12月には、ソフトバンクが出資を発表するなど、多くの企業からも注目を集めている(関連記事)。
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米Altaeros Energiesはヘリウムの浮力を利用して空中に浮かべる形の風力発電を開発中だ。出力が増え、設置コストが低いという。ソフトバンクは2014年12月5日、同技術の開発と商用化支援を目的として、同社に700万米ドル(約8億4000万円)を出資すると発表した。携帯電話の通信基地局を兼ねた空中発電所が実現しそうだ。 - まるで巨大な“羽根のない扇風機”、水と風で発電するビルがオランダで計画
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