「マグネシウム発電」で走る電気自動車が誕生、リチウム電池とハイブリッドに:電気自動車
超小型の2人乗り電気自動車を開発する岐阜県のベンチャー企業が斬新なプロトタイプを完成させた。バッテリーにリチウム電池を搭載するのに加えて、水を入れて発電するマグネシウム電池を使うと1カ月間の連続走行が可能になる。車体の前面が開閉して乗り降りするユニークな構造にも注目だ。
2年前の東京モーターショーで注目を集めた2人乗り電気自動車のコンセプトカー「D-FACE」が実車のプロトタイプになって登場する。10月29日から開催する今年のモーターショーに「piana(ピアーナ)」のネーミングで出展する予定だ(図1)。開発したのは岐阜県のベンチャー企業「STYLE-D」で、2016年の市販を目指している。
pianaは外観もユニークだが、それ以上に注目すべきはマグネシウム電池を電源に使える点だ。マグネシウム電池は水を入れるだけで発電できる簡便な電源で、マグネシウムが塩水に溶けやすい性質を利用する。使い捨て方式のため、非常用の電源に使われることが多い。
pianaに搭載するマグネシウム電池の発電量は現時点では公表していないが、1カ月分に相当する800時間の走行が可能になる見込みだ。主力電源のバッテリーにはリチウム電池を搭載して、2つの電池でハイブリッドの構成をとることができる。マグネシウム電池はオプションで販売する。
リチウム電池の容量は7.2kWhで、超小型のpianaに搭載すると1回の充電(3時間)で最長120キロメートルまで走る能力がある。充電量が少なくなっても、マグネシウム電池で発電して走り続けることができる。電気自動車の課題である「バッテリー切れ」を防ぐ対策になる。
車体の大きさは全長2.5メートル、横幅1.5メートル、高さ1.6メートルとコンパクトながら、運転席と助手席が横に並ぶ2人乗りになっている。前面が上に向かって開くハッチ式で、車の前方から乗り降りする(図2)。ドアの可動域は前方0.6メートルに収まり、狭い場所でも駐車しやすい。雨が降っている時には、上に開いたドアが屋根になって濡れずに乗り降りできる。
STYLE-Dは岐阜県の関市で2015年3月に設立したばかりのベンチャー企業で、電気自動車のほかに作業用のロボットなども開発中だ。トヨタ自動車のデザイン部に12年間在籍した山下泰弘氏が代表を務める。設計業務は2007年に山下氏が設立した「D-Art」が支援する体制をとっていて、2年前のモーターショーで発表したコンセプトカーのD-FACEもD-Artが設計した。
関連記事
- お菓子と同じ紙箱を使う非常用マグネシウム空気電池、炭酸飲料でも発電可能
凸版印刷は「第6回 高機能フィルム展」で、古河電池と共同開発した非常用マグネシウム空気電池「MgBOX(マグボックス)」を展示した。4つの電池セルそれぞれに、500mlの水を注入すれば300Whの電力を発電できる。 - 空気と水で作るディーゼル燃料で自動車が走る、アウディが運用を開始
ドイツのアウディ(Audi)は、ドイツ・ドレスデンの研究施設で空気と水から合成したディーゼル燃料「e-diesel(eディーゼル)」の生産を開始したと発表した。自動車用に利用を進めていくという。 - 空気と水とアルミで1600km走る、変わるか電気自動車
米AlcoaとイスラエルPhinergyは、2014年6月、アルミニウム空気電池で走行する電気自動車を公開した。金属アルミニウム自体を電気の「缶詰」として利用するため、充電せずに走行する電気自動車となった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.