空気と水で作るディーゼル燃料で自動車が走る、アウディが運用を開始:自然エネルギー
ドイツのアウディ(Audi)は、ドイツ・ドレスデンの研究施設で空気と水から合成したディーゼル燃料「e-diesel(eディーゼル)」の生産を開始したと発表した。自動車用に利用を進めていくという。
今回アウディが開発した合成ディーゼル燃料は、二酸化炭素(CO2)と水を高温で合成することで作り出すもので、硫黄などを排出しない他、再生可能エネルギーを利用することで、完全にクリーンな燃料を創出できることが特徴となる(図1)。
アウディがドイツのsunfireとスイスのClimeworksと共同で研究を進めてきた技術で、2014年11月にパイロットプラントを開設。2015年4月から本格生産を開始した(図2)。sunfireは、エネルギーの液体保存(Power to Liquid)やガス保存(Power to Gas)技術などを持つエネルギー関連企業で、特に高温での合成技術などで評価を受けている。一方ClimeworksはCO2の吸入技術などを提供している。
高温電気分解で効率的にエネルギー変換
アウディのeディーゼルの生産方法は以下のような手順で行う。まず、水を蒸気を形成するように800度以上に加熱し、高温電気分解により水素と酸素に分解する。同技術は熱回収技術に比べても効率的だという。また、変動の激しい再生可能エネルギーの電力供給を安定化するためにも活用できる。
こうして分離した水素に再び合成反応器において、高温で圧力をかけ、CO2と反応させる。こうして「Blue Crude」として知られる長鎖炭化水素化合物から作られた液体が精製される。これをさらに改良して、化石燃料と非常に近い「eディーゼル」を作る(図3)。生成における全工程のエネルギー変換効率は70%となっており、非常に高い変換が可能だとしている。
この合成燃料は、硫黄および芳香族炭化水素を含まず、高い発火性を備えている。そのためそれ自体で燃料として使用できるだけでなく、ガソリンなどと混合して使用することもできるという。今後数カ月にわたってeディーゼルは同プラントで3000リットル以上生産される計画だとしている。
2015年4月21日(現地時間)に開催されたセレモニーでは、ドイツ連邦政府の教育研究大臣であるジョハンナ・ヴァンカ(Johanna Wanka)氏が、公用車である自身のアウディA8に5リットルのeディーゼルを給油したという(図4)。
関連記事
- なぜ水素をメタンに変えるのか、高効率変化へ一歩前進
日立造船など3社は、低コストで水素をメタンに変換する技術の開発に成功した。邪魔者の二酸化炭素を利用し、比較的扱いにくい水素を、既存のインフラで利用可能なメタンに変える試みの1つだ。 - 水素社会実現へ、東芝が製造から貯蔵、発電・利用まで一貫して事業展開
東芝は「水素」関連事業の強化に乗り出し、製造から貯蔵、発電・利用まで一貫したソリューションを提供する。「地産地消」型ビジネスと「サプライチェーン」型ビジネスに新たに取り組み、2020年度に水素関連事業で売上高1000億円を目指す。 - 太陽光エネルギーを水素で貯蔵、変換効率15.3%を達成
理研は、太陽光エネルギーから水の電気分解により水素を製造し貯蔵するシステムを開発。シンプルな構造で安価なシステムを実現し、エネルギー変換効率15.3%を達成したという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.