京都初の移動式ステーション、水素で2拠点をつなぐ「マザー&ドーター方式」:蓄電・発電機器
大阪ガスが京都市南区で建設を進めていた、京都府初となる移動式の水素ステーション「上鳥羽水素ステーション」がこのほど完成した。2016年3月30日の開所を予定している。同社が既に大阪府で開設している「北大阪水素ステーション」で製造した水素を運搬し、燃料電池自動車(FCV)に提供していく。
「上鳥羽水素ステーション」は、水素を供給する設備を搭載したトレーラーを専用スペースに駐車して水素を燃料電池自動車に販売する移動式ステーションだ(図1)。都市ガスから水素を製造する装置「HYSERVE-300」を設置している「北大阪水素ステーション」で製造した水素を運搬し、燃料電池自動車(FCV)に提供する。
このように北大阪水素ステーション(マザーステーション)と上鳥羽水素ステーション(ドーターステーション)を一体運用する「マザー&ドーター方式」を確立することで、北大阪水素ステーションの稼働率を向上し、より効率的な運用を目指す(図2)。
上鳥羽水素ステーションには車載設備として水素圧縮機、蓄ガス設備(蓄圧器)水素プレクール設備、ディスペンサー。地上設備には空気圧縮機、水素カードル庫を備える。充填能力は1時間当たり100Nm3(ノルマル立法メートル)。充填圧力は70MPa(メガパスカル)で、充填速度は1台あたり3分程度。水素の販売価格は1キログラム当たり税別1100円(価格は変更する場合あり)。なお建設にあたっては、経済産業省の「水素供給設備整備事業費補助金」の交付を受けている。
大阪ガスは、FCVの普及に向けこれら水素供給インフラ設備の運営ともに、コンパクトな水素製造装置の開発も進めてきた。
同社が開発し、北大阪水素ステーションに設置しているコンパクト水素製造装置HYSERVE-300は、長年培った高性能触媒技術をベースに、都市ガスを原料として、オンサイトでより安価かつ省スペースで、簡単に高純度水素を発生させることができる。改質部と精製部を同一ユニット内にパッケージ化し、設置面積を大幅に削減している。
原料には中圧都市ガス(0.1MPa以上)を利用でき、圧縮動力を大幅に低減することが可能だ。また、主要機器仕様の標準化により製作費のコストダウンを実現した。さらにスキッドマウント構造により、装置の輸送、設置が容易になったほか、現地工事の期間およびコストを大幅に低減できるとしている。
関連記事
- 水素ステーションはどこまで普及したのか、今後を占う規制緩和と現在地
燃料電池車に注目が集まる一方で、遅れも指摘されている水素ステーションの整備状況は今どうなっているのか。「東京モーターショー2015」と同時開催の「SMART MOBILITY CITY 2015」に出展した水素ステーション普及団体である水素供給・利用技術研究組合(HySUT)のブースを取材した。 - コンビニと水素ステーションが一体化、燃料電池で発電して店舗電力に
日本初となるコンビニ併設型の水素ステーションが登場した。岩谷産業とセブンセブン‐イレブン・ジャパンが協力したもので、東京都と愛知県の2店舗にオープンする。純水素燃料電池を活用して、水素で発電した電力を店舗にも活用していく。 - 水素社会を家庭の燃料電池から、総額95億円で補助金制度を新設
政府は家庭用の燃料電池「エネファーム」に対する新しい補助金制度を2016年度に開始する。補助金の対象になる基準の価格を設定して、基準額を超えた場合には補助金を減らす独特のスキームを採用する方針だ。価格の低下を誘導しながら、2020年までに累計140万台の普及を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.