燃料電池車の水素タンクを国産化、三井物産と東レが米国企業と開発契約:電気自動車
2020年を目標に「水素社会」を目指した取り組みが進む中で、自動車メーカーを中心に燃料電池車市場の拡大に向けた動きも加速している。こうした市場拡大を見込んで三井物産と東レは米国Hexagon Lincolnと共同で、燃料電池車に必須の部品である水素タンクの国産化に向け、開発契約を結んだ。
三井物産、東レ、米国Hexagon Lincoln(ヘキサゴンリンカーン)の3社は2016年4月25日、日本で車載用炭素繊維強化高圧水素タンク製造の販売事業を行う合弁会社設立の検討に向け、共同開発契約書を締結した。
この開発計画では、樹脂ライナー製炭素繊維強化圧力タンク(コンポジットタンク)メーカーであるヘキサゴンリンカーンの高圧水素タンク製造技術、三井物産の顧客資産や販売網、東レが強みとする炭素繊維の供給力および技術開発力を活用。水素社会の実現に向けた取り組みが進む日本において、燃料電池車の機能部品の1つである炭素繊維を使用した高圧水素タンクを2020年頃から製造する狙いだ(図1)。
世界的に温暖化対策が喫緊の課題となっており、自動車を中心とした輸送機器のエネルギー消費削減に向けた解決策の一つとして部品・材料の軽量化が重視されている。そこで炭素繊維などの軽量化素材を使用した部品市場の拡大も予想されている。
ヘキサゴンリンカーンはコンポジットタンクの多くの量産実績を持ち、燃料電池車用の高圧水素タンクの開発も行っている。日本ではトヨタやホンダなどが既に燃料電池車を市場投入し、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年には燃料電池車の量産規模を数万台規模に拡大することを検討している。このように世界の中でも特に早く燃料電池車市場の拡大に向けた動きが進んでおり、同時に主要部品である高圧水素タンクの需要も拡大していく見込みだ。
三井物産、東レ、ヘキサゴンリンカーンの3社はこうした動きを踏まえ、燃料電池車機能部品である高圧水素タンクの国産化を目指すとしている。
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