膨大な電力を消費するデータセンターの節電に、直流380Vの給電システム:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
インターネットの拡大に伴って全世界で膨張を続けるデータセンターでは大量の電力を消費する。停電時にも電力を供給し続けるために、蓄電池を内蔵した給電システムが不可欠だ。通常の交流による電力の供給方法に代わって、高電圧の直流を使った給電システムが新たな節電対策になる。
太陽光発電と組み合わせた効果も実証中
NTTファシリティーズは2011年にHVDC給電システムを製品化して、NTTグループを中心に販売してきた。この給電システムは電力会社が供給する200Vの交流を380Vの直流に変換する「HVDC整流装置」と、380Vの直流をICT機器に供給する「HVDC分電盤」の2つで構成する(図3)。
新たにHVDC整流装置の低価格版を発売して、データセンターの導入事例を拡大する狙いだ。100kW(キロワット)の電力を供給できるタイプで従来は約740万円だったが、約500万円に引き下げた。整流装置に使う部品の共通化を図って製造コストを大幅に削減した。
これまでHVDC給電システムは初期の導入コストの高さが課題になっていた。整流装置の価格を引き下げたことで、交流を利用する通常の給電システムと比べて5%程度の割安になる見込みだ。
最近はデータセンターの電力の一部を再生可能エネルギーで供給する取り組みが各地に広がってきた。太陽光発電事業も手がけるNTTファシリティーズは米国の大学でHVDC給電システムと太陽光発電システムを組み合わせた実証プロジェクトにも取り組んでいる。テキサス大学のオースチン校にある「テキサス・アドバンスト・コンピューティング・センター(TACC)」で2016年8月に実証運転を開始した(図4)。
TACCでは太陽光で発電した直流の電力をHVDC対応のパワーコンディショナーで380Vに変換する。同時にHVDC整流装置を使って電力会社の交流の電力を380Vの直流に変換して、両方を合わせてHVDC分電盤からICT機器に供給する仕組みになっている。HVDC整流装置は大容量の500kWタイプを採用した。
さらにHVDC対応の照明や空調も導入して、省エネ効果を最大限に発揮する。従来と比べて電力の消費量を15%削減することが目標になっている。2017年3月まで実証運転を続けて節電効果を検証する予定だ。
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