水素で200キロ走る燃料電池バス、東京都心で運行開始へ:電気自動車(2/2 ページ)
東京都の交通局が水素社会の実現に向けて燃料電池バスの運行を3月21日に開始する。トヨタ自動車が市販する燃料電池バス2台を導入して、東京オリンピック・パラリンピックの会場周辺と東京駅を結ぶ。車体の上部に搭載した燃料電池2基と水素タンク10本で200キロメートルの走行が可能だ。
2020年までに100台以上を導入
東京都はオリンピック・パラリンピックを開催する2020年までに100台以上の燃料電池バスを運行させる計画だ。合わせて燃料電池自動車を6000台に増やし、都内の水素ステーションも35カ所に拡大する目標を掲げている(図5)。世界で最先端の水素社会を構築してオリンピック・パラリンピックでアピールする。
トヨタ自動車は東京都や国が推進する水素社会に向けて、燃料電池バスの生産台数を増やしていく。2019年度までに累計で100台を生産して、さらに2020年度には月産10台のペースに引き上げる方針だ(図6)。現在は1台で約1億円の車両価格を量産効果で大幅に低下させる。
政府は自動車やバスが排出するCO2を削減するために、2030年度には燃料電池自動車を全国で80万台、燃料電池バスを1000台以上に増やす(図7)。当面は東京都を中心に普及させながら、量産効果による車両価格の低下と水素ステーションの増加に伴って全国へ拡大させていく。同時に水素の需要を増やして国内の新たな産業として育成する。
その一方で燃料電池自動車や燃料電池バスを災害時の電力供給源としても活用する。トヨタFCバスには最大で7.2kWの電力を外部に供給できる能力がある(図8)。供給できる電力量は235kWh(キロワット時)にのぼり、一般家庭の使用量(1日あたり10kWh)に換算して約24世帯分に相当する。
災害時には燃料電池バスを避難所に移動して照明や空調の電力に生かす。東京都内で100台の燃料電池バスを利用できれば、災害時の移動電源車として大きな役割を果たせる。環境にやさしくて災害に強い水素社会に一歩ずつ近づく。
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