年間1億円以上の電力コスト削減、補助金に頼らないエネルギー地産地消が静岡市で:エネルギー供給(2/2 ページ)
静岡市でエネルギーの地産地消とバーチャルパワープラント(VPP)を活用した注目の事業が始まった。鈴与商事が市内のゴミ処理場で発電した電力を市有施設に供給する他、80カ所の小学校に蓄電池を導入してVPPを構築する。静岡市は年間1億円以上の電力コスト削減が見込める。政府の補助金を活用せず、自治体と新電力が独自で自立したビジネスモデルを構築するモデルケースとして注目の事業だ。
80カ所の小学校に蓄電池を設置
事業の2つ目の特徴が、蓄電池を活用したVPPの構築だ。VPPとは再生可能エネルギー電源や複数の小規模な蓄電池などを活用し、電力需給をコントロールすることによって、あたかも1つの発電所のように全体を制御する仕組みのこと。需要家が節電量を取り引きできるネガワット取引市場の創設に伴い、新しいエネルギー管理の手法として注目が集まっており、全国で実証事業が進んでいる。
今回の事業では市内の小学校80カ所に、合計800kW(キロワット)、総容量792kWh(キロワット時)の蓄電池を導入する。これらの蓄電池の投入コストは鈴与商事が負担し、充放電の制御による需給調整についてはVPPの構築に実績のあるエナリスの協力を得る。電力需要が低い夜間に充電し、需要が高い日中に放電するなどして電力コストの低減に活用する。
蓄電池の導入によって、静岡全体で一般家庭1日当たりの電力使用量換算で、最大約80世帯分の電力を確保することができる。蓄電池に貯蔵した電力は需給調整だけでなく、非常時には防災用電力としても活用する計画だ。蓄電池の設置工事などに伴い、14億円程度の経済効果も期待できるとしている。
今回のケースは、政府の補助金を活用せずに自治体と新電力が独自で自立したビジネスモデルを構築するモデルケースとして、注目の事業だ。鈴与商事とエナリスではこの事業で得た技術やデータを活用し、小中学校における環境教育の推進など、新事業の検討も進めるとしている。
関連記事
- 電力を地産地消する動きが加速、原子力に依存しない分散型へ移行
日本の電力供給の構造が大きく変わり始めた。特定の地域に集中する大規模な発電所による供給体制から、再生可能エネルギーの電力を地産地消する分散型へ移行する。災害が発生しても停電のリスクが低く、新しい産業の創出にもつながる。特に原子力発電所の周辺地域で取り組みが活発だ。 - エネルギーの地産地消で町が変わる、自治体が電力の小売に乗り出す
電力会社を頂点とする従来の市場構造を転換する試みが全国各地に広がってきた。自治体が主導して再生可能エネルギーを増やしながら、同時に地域内で消費できる循環型のエネルギー供給システムを構築する。4月に始まる全面自由化に向けて、自治体が出資する小売電気事業者も続々と生まれる。 - 新潟県五泉市でスマートシティ計画、エネルギーの地産地消へ
新潟県五泉市でエネルギーの地産地消を目指したスマートシティ計画が進行中だ。ミライト・テクノロジーズと越後天然ガスが五泉市で実施した再生可能エネルギー利用の調査を行った。今後市と協力して太陽光発電やガスコージェネレーションシステムを活用したシステムの構築を検討する。 - エネルギーで企業城下町の未来をつくる、日本初の熱電供給プロジェクト
静岡県磐田市で、日本初の熱電供給プロジェクトがスタートする。磐田市とJFEエンジニアリングが共同出資会社を設立し、新たに建設するガスタービン発電所の電力と熱を地域の企業に提供する。従来より安くエネルギーを供給することで、企業のコスト削減や競争力の強化に貢献し、地域産業の活性化を目指す意欲的なプロジェクトだ。 - スマートコミュニティで地方創生、エネルギーの持続可能な地産地消へ
岐阜県東部に位置する瑞浪市で、スマートコミュニティを活用した地域経済の活性化プロジェクトが進んでいる。分散型エネルギーシステム・サービスを導入することで、低層住宅地をスマートコミュニティとして再構築する。競争力のある住宅地の整備することで、瑞浪市の定住人口の増加を図り、市の地方創生に寄与する狙いだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.