地元の未利用木材を活用するバイオマス発電が運転開始、1万世帯の電力を供給へ:自然エネルギー
北海道苫小牧市晴海町に建設されたバイオマス発電所が営業運転を開始した。燃料の木質チップは北海道の未利用木材で賄い、年間約6万トンを活用する。出力は約5.9MW、年間の発電量は4000万kWhを見込む。苫小牧市の世帯数約11%にあたる1万世帯分の電力を供給するという。
苫小牧市の世帯数約11%にあたる電力を供給
住友林業は北海道苫小牧市晴海町に建設した、約1万4000m2のバイオマス発電所が2017年5月に営業運転を開始したと発表した。この「苫小牧バイオマス発電所」は同社の他、三井物産と北海道ガス、地元の林業事業者であるイワクラが建設を進めてきた。
燃料の木質チップは北海道の未利用木材で賄い、年間約6万トンを活用する予定だ。出力は約5.9MW(メガワット)、年間の発電量は4000万kWh(キロワット時)を見込む。約1万世帯分の電力を供給するという。苫小牧市の総世帯数は2017年4月時点で8万7672世帯のため、約11%に当たる電力を地産地消型の木質バイオマスで供給できる。
苫小牧バイオマス発電所は2016年12月から試運転を開始しており、2017年2月から北海道ガスが電力調達を開始した。北海道ガスは「2016年4月の電力小売全面自由化に合わせて開始した『北ガスの電気』の重要な電源の1つとして位置付けている」と語る。
住友林業グループが手掛けた発電事業は、苫小牧バイオマス発電所で3つ目となる。1つ目は、2011年2月に運転を開始した「川崎バイオマス発電所」(神奈川県川崎市)だ。国内初の都市型バイオマス発電所であり、年間12万トンのCO2削減に貢献している。NOx(窒素酸化物)を除去する装置、Sox(硫黄酸化物)を除去する装置も備えた。
従来は焼却処分されていた、都市部で大量に発生する建築廃材を年間18万トン活用することで、エネルギーの地産地消を実現した。出力は3万3000kW(キロワット)。住友林業の他、グループ会社の住友共同電力とフルハシEPOの3社で事業を行っている。
2016年12月には、住友共同電力との合弁で設立した「紋別バイオマス発電所」(北海道紋別市)の運転を開始した。オホーツク地域の未利用木材を主燃料として活用。輸入PKS(ヤシの実の種の殻)、補助燃料の石炭など多様な燃料も利用しているという。木質チップは年間約22万トン、輸入PKSと石炭はそれぞれ5万トンを使用する予定だ。出力は50MW、年間で6万5000世帯分に相当する発電量を見込んでいる。
住友林業は1917年から紋別市で山林経営を開始し、2017年で100周年となった。森林資源の価値向上に加え、道内の未利用木材の有効利用に取り組んできたとしている。同社グループでは「バイオマス発電事業への参入も、その一環である。今後も地域に根ざした事業モデルを構築し、森林資源の活用に貢献する」と語る。計画段階も含めて、2019年3月までに再生可能エネルギーの発電事業を200MW規模まで拡大する方針だ。
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