科学で省エネ行動は促せるか、東電などが8万世帯で実証:エネルギー管理
東京電力エナジーパートナーなど4社は、家電や自動車の利用者に対してナッジによって省エネ行動を促す社会実証を2017年7月から開始する。ナッジとは、行動科学などの理論に基づいた情報発信で、行動変容を促す手法だ。家庭におけるCO2排出量の平均2%以上削減を目指すという。
家庭のCO2排出量を平均2%以上削減を目指す
「ナッジ」で省エネ行動を促す――。ナッジとは“そっと後押しする(nudge)”という意味で、行動科学などの理論に基づいた情報発信で、行動変容を促す手法を指す。
東京電力エナジーパートナー(東電EP)は2017年5月30日、デロイト トーマツ コンサルティングと電力中央研究所、凸版印刷と共同で、家電や自動車の利用者に対してナッジで省エネ行動を促す社会実証を同年7月から開始すると発表した。家電の利用者は国内最大級とする最大8万世帯、自動車は数千台規模を実証の対象とする。事業期間は、2017〜2021年度まで。家庭のCO2排出量を平均2%以上削減することが目標という。
同事業は8つのテーマに分けて行われる。テーマ1〜3では、家電の利用者に省エネ行動を促進するための情報をHEMSやスマホアプリ、郵送などで発信し、ナッジ活用によるCO2排出削減の効果を検証する。テーマ4は自動車の利用者に、車載ディスプレイやスマホアプリを通じてエコドライブを促進するための情報を発信して、同様の検証を行う。
テーマ5では家電と自動車をどちらも保有する利用者に対して、省エネ行動を同時に促進可能な方法を検討。これらの社会実証の中で適用可能な新たな方法論やアイデアの検討が、詳細な行動観察データの解析や事例調査に基づき、テーマ6〜7で行われる。
最後のテーマ8ではナッジによる省エネ行動を促す手法を構築するとともに、環境省が発足した「日本版ナッジ・ユニット」と連携し、ガイドブックの策定を行うとした。
各テーマにおける各社の役割。産官学が連携したコンソーシアム体制で臨むとしており、冒頭で挙げた4社の他、旭化成ホームズ、オリックス自動車、監査法人のトーマツ、未来工学研究所、東京大学 先端科学技術研究センター(西成活裕研究室)、山梨県 エネルギー政策課が協力事業者として参画した (クリックで拡大) 出典:東電EP
なお今回の社会実証は、環境省「平成29年度低炭素型の行動変容を促す情報発信(ナッジ)による家庭等の自発的対策推進事業」における採択案件「家電・自動車等利用に関するナッジを活用した低炭素型行動変容モデルの構築」として実施される。
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