電柱をIoT化して新たなサービスを、愛知で実証開始へ:エネルギー管理
電柱にICT機器を設置し、業務の効率化や新たなサービスの開発について検討を行ってきた中部電力。同社はその取り組みの一環として、ソニーが独自に開発したLPWA技術を用いて実証実験を行うことを発表した。2017年夏頃から愛知県豊田市全域で検証を開始するという。
電柱のIoT化で新たなサービスを
電柱のIoT化による新たなサービスの提供を――。中部電力は保有する電柱にICT機器を設置し、業務の効率化やサービス開発について検討を行ってきた。同社はその取り組みの一環として、LPWA技術を用いて実証実験を行うことを2017年5月に発表した。
LPWAとはLow Power Wide Areaの略で、通信速度を低速に制限することにより、低消費電力や広い通信エリア、通信端末の低価格化を実現する無線通信方式である。SIGFOXやLoRa、NB-IoTなどがLPWAに含まれる。中部電力が実証実験で活用するのは、ソニーが2017年4月に発表した独自開発のLPWAネットワーク技術である。
実証実験ではGPSとLPWA送信機が一体となった端末を、中部電力従業員の車両に搭載。電柱などに設置したLPWA受信機を介して、クラウド上に位置情報を蓄積する。蓄積した位置情報を用いて、業務の効率化や安全管理への活用可能性を検証する。
同社の広報担当者によると、これまでは無線機を用いて、タクシーの配車のように従業員へ指示を行っていた。そのため他の作業をしていると無線機の指示に気付かず、緊急事態に出向できなかったり、停電時の巡視作業を効率的に行えなかったりしたという。位置情報を把握できるようにすると、これらの業務効率化が期待できる。
またLPWAは既存の通信技術よりも安価で、通信距離が長い。これにより山間部における巡視で、危険なことが起こった場合の安全管理につなげることも可能だ。
100km以上の遠距離通信が可能
ソニー、ソニーセミコンダクタソリューションズが開発したLPWA技術は、障害物がない場合に100km以上の遠距離通信に成功したことに加えて、時速100kmで移動中でも安定的に通信可能。誤り訂正やデジタル信号処理、高周波アナログ回路技術など、同社がコンシューマーエレクトロニクス分野で培ってきたノウハウを応用したという。
中部電力では2017年夏頃から、愛知県豊田市全域にソニーのLPWAを活用したネットワーク環境を構築し、実証実験を進める。また電柱にカメラやセンサーも搭載し、電柱のIoT化によって新たなサービス開発にもつなげる狙いだ。広報担当者は「パートナー企業をこれから募集していくため、実証実験の期間や具体的なサービスについては未定である。現時点では見守りや防災、マーケティング分野などが考えられる」と語った。
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