クルマの蓄電池で電力系統を安定化、三菱自がオランダで実証開始:エネルギー管理
三菱自動車は、V2G(Vehicle to Grid)技術を利用した電力系統安定化の実証実験をオランダで開始すると発表した。実験には同社の「アウトランダーPHEV」を活用し、予備電力市場向けにサービスを提供する。
車載蓄電池で電力系統安定化
三菱自動車は、同社が製造、販売する「アウトランダーPHEV」の車載蓄電池を活用した電力系統安定化の実証実験を開始すると発表した。普及が進む再生可能エネルギー電源や自動車の電動化によって増える電力系統の負荷を、V2G(Vehicle to Grid)技術によって軽減する。
実験は三菱自動車の他、欧州最大の電動車両向け充電サービス事業会社であるオランダのNewMotion社、同国の国営送電事業者TenneT社、V2Gプラットフォームを開発する米国のベンチャー企業Nuvve社が参画し、オランダ首都アムステルダム市で実施する。
実験ではアムステルダム市内の家庭や勤務先に、イタリアの大手電力会社であるEnel社製のV2G用充放電器を合計10台設置する。NewMotion社とNuvve社がV2Gアグリゲーターとなり、V2G用充放電器と接続したアウトランダーPHEVの車載蓄電池の充電量を確保しつつ、系統への電力融通を最適化する。融通する電力は、予備電力市場向けに提供するという。
欧州では、英仏両政府が2040年以降化石燃料車を販売禁止する方針を掲げるなど、自動車市場の電動化が加速しており、車両の充電が電力インフラに与える負荷の軽減が課題となっている。同時に出力変動の大きい再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、系統安定化のニーズも高まっている。そこで、今後普及が見込まれる電動車両の車載用蓄電池を、電力グリッド向けに充放電するV2G技術に注目が集まっているという。
三菱自動車のアウトランダーPHEVは、オランダで累計2万5000台以上の販売実績がある。同社は、今回の実証を通じて電動車と車載蓄電池を活用した新たな価値、事業機会の創出を目指すとしている。
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