小型風力のFIT価格は撤廃へ、「FITからの自立は困難ではないか」:自然エネルギー(2/2 ページ)
FIT価格が55円/kWhと高額な小型風力。政府はこの小型風力のFIT価格を撤廃し、20kW以上の風力と同じ区分にする方針を示した。
洋上風力には入札制度を導入へ
委員会では今後日本でも導入拡大が期待される洋上風力発電についても討議が行われ。その中で、太陽光やバイオマスのように、将来的にFIT価格の決定に入札制度を導入する方針が示された。
国内の洋上風力発電は、2016年度に港湾区域内の占用許可を申請できる事業者を公募で決定する新制度が導入された。現在、この制度を利用した案件が2件認定されている。さらに一般海域を利用する事業が5件認定されている。現在、一般海域の利用についてはルールの整備が進められているところだ。
洋上風力については、東北電力が実施した東北北部の電源募集プロセスにおいて、出力ベースで約786万kWの応募があるなど、事業計画の策定が活発になっている。さらに先述した一般海域の利用に関するルールの整備が完了すれば、導入が加速することが想定される。
こうした背景から、国民負担の軽減を目的に、洋上風力についてもコスト低減を促すために入札制度を導入する考え。風力発電の導入が盛んな欧州では、洋上風力に入札制度を導入することが一般的になりつつある。日本円で10円/kWh以下の価格で落札される事例も複数登場している。ドイツでは2017年にプレミアム(補助金による上乗せ)無しの市場価格で落札される事例が生まれた。入札制度はこうした大幅な価格低減に大きく貢献しているとみられている。
具体的な入札制度の導入時期や、詳しい制度設計については今後の検討事項となる。一般海域の利用ルールが整備と合わせて導入される可能性が高い。なお、こうした入札制度の検討も考慮し、2020年度の調達価格は今年度の委員会では決定しないこととした。
なお、20kWの風力発電については、2020年度のFIT価格の決定に向けて討議が行われた。設備利用率の想定値は2019年度より0.8ポイント高い25.6%を採用する方針で、資本費、接続費など各種コストの想定値は据え置かれた。そのため、2020年度のFIT価格は、設備利用率の向上分を反映し、2019年度の19円/kWhより1円程度低い価格となる可能性が高そうだ。
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