企業は人が持つ柔軟性や創造力を生かすことで新たな価値を生み出してきた。しかし今、人手不足によってビジネスの維持、成長が危ぶまれる事態になっている。
従業員にとっても悩ましい問題だ。人が増えずビジネスだけが複雑になれば1人当たりの業務量が増え、残業時間が延び、創造的な仕事に打ち込めなくなる、など負のスパイラルに陥る。やりたい仕事ができず、モチベーションが下がり続ける事態は避けたいと誰もが思うだろう。
忙しさが増すビジネス現場の負担を減らす切り札として、AIに注目が集まっている。そんなAIの可能性を追求しているのがMicrosoftだ。同社はAIアシスタント「Microsoft Copilot」を発表し、「Microsoft 365」をはじめとする各種製品にAIを搭載。AI時代の働き方を支えるデバイスとしてPCの新クラス「Copilot+ PC」も打ち出している。2025年5月に最新PCを発表した際も「企業がAIの可能性を最大限に引き出せるように支援することをお約束します」と表明した。
AIを活用することでビジネスがどう変わるのか。企業のIT利用をハードウェアとソフトウェアの両面から50年にわたって支えてきたMicrosoft、その日本法人にAI活用の現在地を聞いた。
日本マイクロソフトの中島史晶氏(Surface ビジネス本部 プロダクトマーケティングマネージャー)。「Microsoft Office 2003」「Windows Vista」などの日本展開を支え、現在はCopilot+ PCを含む「Surface」シリーズを担当している日本マイクロソフトの中島史晶氏は、AIの価値を(1)人間の業務を代替する、(2)人間の能力を活性化させる――という役割に大別する。前者は、データ分析や資料作成など従業員が手間をかけていた業務をAI中心に切り替えるイメージだ。
「AIに業務を任せられれば作業効率が上がるので、従来と同じ労働時間、労働量でより多くの成果を出せるようになります。経営層には魅力的に映るはずです。しかし、AIによって業務過多になることは避けたいというのが従業員の本音でしょう」
中島氏は(2)に当たるAIの使い方、つまり従業員の真価を引き出すためのAI利用に期待を寄せている。AIを補助的に使うことで、これまでは諦めていたことができたり成果物の質を高められたりできる。外国語が話せない従業員がAI翻訳を駆使して営業活動をする、プログラミングの専門知識がない従業員がAIを使って業務ツールを作る、などのケースだ。
AIを使うことで以前の自分を超える能力を発揮できれば「本当にやりたかったこと」が近づく。「業務に対する意識が変わり、新たな取り組みに挑む活力が生まれ、巡り巡ってイノベーションの創出やビジネスの成長につながる」と中島氏は話す。「ChatGPT」やMicrosoft Copilotなどを使った人の中には、AIによるポジティブな効果を実感した人もいるのではないだろうか。
「AIを使いたい」と思い立ったら、まずは一歩踏み出すことが大切だ。PCやモバイルデバイスを1人1台以上持つことが当たり前になり、大規模な投資をしなくてもAIの利用環境を整備できる。それを土台にして、AIを業務にどのように取り入れるか考えることが求められている。
「日本マイクロソフト内でAIを積極的に使うことでベストプラクティスを生み出しています。米国とやりとりする機会が多いので、Microsoft Copilotに英語の文書を読ませるのが便利ですね。技術的な内容の英語ドキュメントも難なく読めるようになりますし、『Microsoft PowerPoint』のスライド内容から英語の発表スクリプトも書いてくれます。言語間のハードルを下げる、あるいは自分の言語能力を上げていると言えるかもしれません」
外国語を話す相手とWeb会議する際は、「Microsoft Teams」の字幕生成機能「ライブキャプション」とリアルタイムの翻訳機能を活用しているという。また、外国語によるセミナー動画やミーティング録画を視聴するときはCopilot+ PCが備えているライブキャプション機能を使用している。動画の音声を基に日本語字幕を表示するもので、ローカルでAI処理しているためタイムラグを極限まで削減可能だ。
中島氏は「記憶」もAIに補佐してもらっている。AIが生成する議事録や要約があるので、会議の内容やタスクを詳細に思い出せる。Copilot+ PCの「リコール」機能を使えば、PCで行った過去の操作をAIで検索できる。これはパスワードや機密情報に指定した内容を除くほぼ全ての操作を数秒置きにスナップショットとして記録しており、AIに「犬の写真を載せたスライドってどれだっけ?」と聞けば該当ファイルを提示してくれる。
「従来は『この情報は残しておこう』と意識的に保存していました。Copilot+ PCを使い始めてから、気にしていない部分もAIが記録してくれるので楽になりました」
発展を続けるAIの価値を十分に生かすには、それに適した環境を整える必要がある。中島氏は、企業が現在使っている端末の多くはコロナ禍や生成AIブーム初期に導入したもので、既に数年経過していると指摘。「クラウドAIであれば利用デバイスのスペック要件に幅を持たせられますが、オンデバイスAIを活用するなら端末のスペックにはこだわりたいですね」
オンデバイスAIの利点は「スピード」「セキュリティ」に集約される。デバイスでAIの演算処理をするため、処理速度がネットワーク環境に左右されない。Webカメラ映像のAI処理や字幕生成などリアルタイム性が求められる場面で、この強みが生きる。デバイス内のデータを外部に送信せず内部処理することから、社内データや機密情報を扱いやすくなる。
オンデバイスAIのスタンダードになりつつあるのがCopilot+ PCだ。AI処理専用プロセッサ「NPU」を搭載しており、40TOPS(1秒当たり40兆回の演算処理能力)以上の性能のNPUを備えたPCがCopilot+ PCに分類される。そこに「1GHz以上で動作する複数コアのCPU」「16GB以上のメモリ」「256GB以上の高速ストレージ」という要件も加わる。小規模言語モデル『Phi Silica』をはじめとするAIコンポーネントを搭載している点も特徴で、「これ1台あればクラウドAIもオンデバイスAIも快適に使えるPC」を目指したハイスペックなPCクラスと言える。
Microsoftは、Copilot+ PCに位置付けられる新型PC「Surface Pro 12インチ」「Surface Laptop 13インチ」を2025年5月に発表した。45TOPSの性能を誇るNPUを搭載した「Snapdragon X Plus」を採用しており、高いパフォーマンスとモビリティーを実現している。
新しいSurfaceは、Copilot+ PCにおける2 in 1型とクラムシェル型のエントリーモデルに位置付けられる。どちらも筐体やキーボードの設計を刷新しており、使いやすさを追求。充電ポートをUSB Type-Cに統一したため、専用の充電ケーブルが不要になった。Microsoft Copilotを起動できる「Copilotキー」や「日本語変換キー」などを標準搭載している。
Surface Pro 12インチは、ファンレス設計を実現している。低消費電力のSnapdragon X Plusを採用したことで実行時の発熱を抑えることに成功した。静音性が求められる場所やほこりが多い工場などでもオンデバイスAIを利用しやすくなったと中島氏は説明する。その他、「Surfaceスリム ペン」の収納位置を本体背面に変更。キーボード上の格納スペースに置く従来タイプに比べてペンが取り出しやすくなった他、収納と同時にペンの充電も可能だ。
Surface Laptop 13インチのタッチパッドはタッチ感度を調整でき、身体が不自由な人でも手や足などで入力しやすくなるという。Microsoftは、ユーザーの体に合わせた入力デバイスを3Dプリンタで制作できるデータを公開するなど、アクセシビリティーに配慮したサポートを提供している。
「新しいSurfaceは利用者の使いやすさを一番に考えています。AI処理はもちろん、基本スペックが高いので日常業務でも活躍するでしょう。部品にリサイクル素材を使うなどサステナビリティーにも配慮しています」
新型Surfaceに搭載されているSnapdragon X Plusは、高いパフォーマンスと低消費電力を両立させている。これによりPCのバッテリー駆動時間が大幅に伸びた。Surface Pro 12インチは最大12時間、Surface Laptop 13インチは最大16時間のWebブラウジングに対応しており、充電せずに半日以上も“ネットサーフィン”が続けられる
Snapdragonは、ソニーの「Xperia」やSamsung Electronicsの「Galaxy」といった名だたるスマートフォンに採用されてきた実績を持つ。スリープ状態からのスムーズな復帰、アプリケーションの高速な起動と軽快な挙動、バッテリー持ちの良さ、ネットワークへの常時接続といった点に強みを持ち、PCでありながらスマホライクな使い方が可能だ。
「Snapdragonは『Armアーキテクチャ』を採用しています。『x86アーキテクチャ』との互換性に対する課題があるとされてきましたが、日々進化しています。多くの業務アプリケーションがArmアーキテクチャに対応していますし、独自のアプリケーションをエミュレーター上で稼働させることも可能です。私がSnapdragon搭載モデルを使った限り、困り事はありませんでした。古いデバイスのドライバなどは検証の手間がかかるかもしれません。それでもパフォーマンスとバッテリーライフの向上というメリットの方が大きいでしょう」
中島氏が一貫して語るのは、AIの可能性だ。AIは単なる業務効率化の道具ではなく、従業員の能力を発揮させ、創造性を刺激するものであり、そのことが従業員の幸福と企業の成長につながるという考えだ。
「オンデバイスAIの性能アップやAIエージェントの登場など、AIの進化はまだまだ止まりません。今からAI活用の土台を整えておけばAIの価値をいち早く享受できるはずです。Windows 11は、新機能が追加されていくOSです。その機能を生かすためには、要件を満たすデバイスの確保は必至です」
AIを使ってビジネス課題を解決し、ビジネスを加速させるアイテムとして、Surface ProやSurface Laptopという選択肢は検討に値するはずだ。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia AI+編集部/掲載内容有効期限:2025年9月29日