ソニー、業績説明会から見えてくる「次の一手」(4/4 ページ)
先日発表されたソニーの第3四半期業績では同社のAV分野での苦戦振りが浮き彫りになっていた。しかし、その業績説明会を聞いていると、同社の採るべき「次の一手」もまた、鮮明に見えてきたのではないだろうか。
音楽の場合は、歩行中や運転中、あるいは仕事中であっても、いろいろなスタイルで一日中楽しむことができる。だからこそ、さまざまなプレーヤーへのハンドリングが重要になる。厳しいDRMは、邪魔でしかないわけだ。だが映像は、見られる時間や環境が限られる。少なくとも歩行中や運転中は、安全のためにやめておいた方がいい。
同時に映像と音楽は、再生回数も大きく違う。音楽は何度も何度も繰り返し聞いても、飽きられることがない。だからいろいろなメディアへ形を変えて聞けることが求められる。だが映像は、一度目は真剣に見るものの、二度三度と繰り返して見ることは少ない。映像作品は、基本的にストーリーという骨子に肉付けされたものだからだ。同じ小説を何度も読むことがそう多くないのと同じである。
ということは、映像のDRMは音楽のように、自由度競争をする必要はないのである。もともと解像度が大画面用ではないこともあって、コンテンツをダウンロードしたメモリースティックがPSPやケータイなどで見られれば、問題ないだろう。まあ、最低でも、保存を兼ねてもっと安価なメディアにいったん退避できる「ムーブ」ぐらいはできないと困るが。
こういった展開を、何度も延期になってガッカリ感全開の大容量のメモリースティックデュオの発売タイミングに合わせていけば、災い転じて福と成すを地でいけると思うのだが、どうだろうか。映像コンテンツを持つソニーなら、いち早く立ち上げが可能だと思うのだが。
(画像左上から)メモリースティック PRO(High Speed)2Gバイト、メモリースティック PRO 512Mバイト、MSAC-PC4、メモリースティック PRO デュオ(High Speed)1Gバイト、メモリースティック PRO デュオ 512Mバイト
まあここまでいろいろ勝手なことを書いたが、なんだかんだいっても業績説明会がこれだけ話題になる会社というのは、そう他にない。いつも何か新しいことをやってくれるソニーの復活を、われわれは望んでいるのだ。
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