MSの新キャンペーン「壁のない世界」は成功するか(2/2 ページ)
Microsoftの宣伝はようやく、前向きに評価できるところまでこぎつけた。Appleに対抗した「わたしはパソコン」CMには不満だが。
- ペンギン:Linux
- ジェットコースター:Vista発売以来の試練
- ダイバー:傷ついたWindowsのブランドイメージ復権に向けたMicrosoftの急降下
- ボクサー:新しい宣伝キャンペーンを通じてAppleをノックアウトしようとしているMicrosoftの計画
- 毛虫:MicrosoftがAppleをどれほど小さな存在と見なしているか。あるいはブランド的に脱皮する前のWindows
ほかにもイメージはあるが、的を射ているのは以上だ。
テレビCMは男性向け?
「わたしはパソコン」のコンセプトに続く新しいCMの映像を、まだMicrosoftは公表していない(最初のテレビ用スポット広告は18日夜に放映)。狙いはAppleの「Macをゲット」CMに対抗することだ。AppleのCMではジョン・ホッジマン演じるパソコン君を無能なダメ男に見せていた。パソコン君は何1つうまくやれないのに対し、自信に満ちたMac君は常に完ぺきだ。
わたしの推測ではCrispin, Porter + Boguskyは、ほかのクライアントにも使ってきたのと同じ使い古された戦術を利用するだろう。深刻なブランド問題を抱えた企業はこの広告会社を頼みにする。Crispin, Porter + Boguskyはどんなブランド問題に対しても、同じコンセプト破りのアプローチを採用する。同社が手掛ける広告キャンペーンはコンセプトもアートデザインも映像の撮り方もすべて同じような印象で、わたしには簡単に見分けられる。
テレビCMの見かけや、Microsoftに向けられた売り込み口上とは裏腹に、初期の「わたしはパソコン」のCMは万人向けにはならないだろう。このCMは単一の、しかし幅広い層に訴えることを狙っている。例えばこの広告代理店が手掛けたBurger Kingの宣伝は、30歳未満の若い男性をターゲットとし、肉を食べたいという欲求に訴えようとしていた。メッセージは「自分の食べたい物を食べていい。それが男だ」。男っぽい男からメトロセクシュアルまで幅広い男性を取り込んだ、健康志向やサラダ志向に対するカウンターカルチャーだった。
AppleはWindows社会の中のヒップなブランドだ。そのブランド力は「Macをゲット」CMよりもはるかに大きい。Crispin, Porter + Boguskyが手掛けた対抗キャンペーンが近視眼的なのは、それが1つの理由だ。Appleブランドの成功にはApple直営店やiPod、そして一連の製品宣伝キャンペーンの成功がはるかに大きく貢献し、「Macをゲット」の影響はごく小さい。
いずれにしても、「わたしはパソコン」のCMはWindowsユーザーに対し、「Windowsユーザーでもいいんだよ」と語り掛けるものになると予想する。Burger Kingの「おれは男だ」CMのようなものになるだろう。
このテレビCMが幅広い層にそっぽを向かれることはないだろう。わたしが見たところBurger KingのCMはそうなったが、Microsoftがそんなやり方を許すはずがない。しかしキャンペーン初期のCMが非常に男性的な感覚のものになるとは予想する。それがCrispin, Porter + Boguskyの特徴的なアプローチだ。CMは、女々しいMacと一緒にされたくない男性のWindowsユーザーにまずアピールしようとするだろう。彼らはタフで自立していて自信に満ち、成功を手にしている。なぜか。Windowsを使っているからだ。
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