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MicrosoftのOrigami、Netbookの台頭で影薄し?

NetbookはMicrosoftのOrigamiプロジェクトの成就なのだろうか? それとも、墓標なのだろうか?

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eWEEK

 Microsoftが2年半前に鳴り物入りで発表した「Origami」という名称の超小型PC(UMPC)は、派手な宣伝の一方で、多くの批判も受けた。謎めいたマーケティング手法で話題作りには成功するも、価格の高さが批判されたのだ。Microsoftの価格目標はこのタッチスクリーン式の小型タブレットPCを500ドル以下で提供するというものだったが、実際には、大半のOEMはそれよりも少なくとも300ドルは高い価格でOrigami端末を販売、その多くは1000ドル以上だった。

 Origamiについては、わたしは最初から懐疑的だった。ノートPCの半分程度の大きさのUMPC端末が市場に登場したころには、既にノートPCの価格が急落していたからだ。わたしは2006年3月のブログ投稿で、「MicrosoftはUMPCをノートPCとは別カテゴリーに位置付けようとしているが、両者は競合することになるだろう」と警告している。JupiterResearchはかなり前にMicrosoft Monitor Weblogを閉鎖してしまったため、そのときのコメントをここに引用しておこう。

 価格が上がれば、消費者は当然OrigamiとノートPCを比較するようになるだろう。11歳になるわたしの娘がOrigamiについてもっともな質問をしてきた。「タブレットPCやノートPCではできなくてOrigamiならできることって何? タブレットPCやノートPCではできるのにOrigamiではできないことって何?」と彼女は聞いてきたのだ。

 Origami端末の価格が低価格帯のノートPCの価格と大差ないようなら、どの点を妥協するかやどの程度お値打ちかがユーザーの購入判断を大きく左右することになるだろう。UMPCでもノートPCでもどうせWindowsが動くのだから、ユーザーが最も優先するのはサイズの小ささ(つまり携帯性の良さ)やキーボードということになるだろうか。購入の判断に影響を及ぼすであろう要因としては、想定されている用途のほか、個人の好み、予算などが挙げられる。

 UMPC端末の売れ行きがあまり芳しくないケースでは、買い手は代わりにNetbookを選んでいるようだ。両者には類似点が多い。

  • ディスプレイサイズが似ており、通常は7〜10.2インチ。UMPCの方が小さい
  • 本体のサイズと重量はほぼ同じで、通常3ポンド(約1.36kg)以下
  • どちらも通常はWindowsを搭載する。Windows XPの場合が多い
  • どちらも通常、光学ドライブを搭載しない

 ただし、大きな違いも幾つかある。

  • 多くのNetbookは500ドル以下で販売されているが、UMPCは通常、もっと高い価格帯で販売されている
  • LinuxベースのNetbookはさらに価格が低く、300ドル以下のものも多い
  • Netbookは従来のノートPCスタイルのキーボードを搭載し、UMPCは通常、従来とは異なるタッチスクリーン式のソフトキーボードを搭載する

 わたしが思うに、差別化要因となっているのはキーボードではないだろうか。NetbookはUMPCの携帯性のメリットの大半を提供しつつ、リアルなキーボードも搭載する。

 Netbookのカテゴリーで製品が売れ始めたのは、ASUSが昨年「Eee PC」をリリースしてからのことだ。台湾の調査会社Market Intelligence Center(MIC)は今年6月、世界のNetbookの出荷台数は今年800万台を超過するとの見通しを発表した。1年前には、Netbookというカテゴリー自体が存在していなかったことからすれば、実に目覚しい成長ぶりだ。Gartnerは2008年のNetbookの出荷台数を520万台と予測、2012年には5000万台に増えると見込んでいる。ポータブルデバイス全体の出荷台数に基づけば、2012年にはノートPCの6台に1台はNetbookという計算になる。

 最近では、IntelのAtomプロセッサがこのカテゴリーにさらに弾みを付けている。Atomプロセッサでは、プロセッサや各種コンポーネントの消費電力量が減り、発熱量も抑えられるからだ。現に、Amazonでは現在50種類以上のNetbookが提供されている。これにはわたしも驚いた。多くのモデルは400ドル以下で販売されている。中には600ドル以上のものもあるが、500ドル以下のモデルが一般的だ。

 わたしは9月26日には地元のコンピュータショップでHPのNetbook「HP 2133 Mini-Note PC」をチェックしてきた。画面が驚くほど鮮明で、キーボードも非常に打ちやすく、わたしはこのMini-Noteが気に入った。仕様は8.9インチ液晶ディスプレイ(解像度は1280×768)、1.6GHzプロセッサ(IntelではなくVIA製)、2Gバイトのメモリ、120GバイトのHDD、Webカメラ、USBポート2基、無線LANはIEEE 802.11 a/b/g対応で、Bluetoothにも対応。サイズは255(幅)×166(奥行き)×27.2〜35.5(高さ)ミリで、重量は構成にもよるが約1.27キロ。店頭の展示モデルには値札が付いていなかったが、AmazonはこのMini-Noteを743ドル99セントで販売しており、最高価格帯のNetbookの1つとなっている。

 次にこのMini-NoteをSamsungのUMPC「Q1」と比較してみよう。Samsung Q1は7インチ液晶ディスプレイ(解像度は1024×800)、1.33GHzのIntel Core Soloプロセッサ、2Gバイトのメモリ、80GバイトのHDD、Windows Vista Businessを搭載し、キーボードは画面左右に分かれて配置される独特のスタイルになっている。AmazonはSamsung Q1を1079ドルで販売しているが、ほかの小売業者はもっと高い価格を付けており、例えば、ディスカウントショップのBuy.comは同じQ1モデルを1334ドル99セントで販売している。

 さらにしつこくもう1つ、ASUSのNetbook「N10」とも比較しておこう。現在N10はAmazonのプレオーダーでのみ注文でき、価格は799ドル。10.2インチ液晶ディスプレイ(解像度は1024×600)、1.6GHz Atomプロセッサ、2Gバイトのメモリ、320GバイトのHDD、Windows Vista Businessを搭載し、グラフィックスプロセッサはIntel GMA 950とNVIDIA GeForce 9300M GS(256Mバイト)をスイッチで切り替えて利用できるようになっている。

 Mini-NoteとN10はQ1よりもかなり低価格で、なおかつ、いずれも通常のキーボードを備えており、ユーザーにとってはより実用的な選択肢となりそうだ。さらにN10はグラフィックス専用のビデオメモリ256Mバイトを搭載する。これは素晴らしい。わたしはQ1との比較にわざと高価格帯のNetbookを選択したが、上述通り、Netbookの多くは500ドル以下で販売されている。

 「UMPCもNetbookも同じだ」と主張する向きもあるだろう。だが、わたしはそうは思わない。MicrosoftのUMPC構想にはタッチスクリーンが含まれていたが、Netbookはタッチスクリーン式ではない。キーボードの問題は重要だ。もし低価格のノートPCやNetbookのせいでUMPCの影が薄いということなら、その最期は近いだろう。あるいは、最期ではなく、「進化」なのかもしれないが。

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