「MacもOK」の企業、8カ月で倍増
Windowsが企業にこれほど浸透し、Appleは大企業への売り込みをほとんどかけていない状況で、Macは実際にどの程度、企業に進出できるのだろうか。
Appleは何もしていないのに、企業がMacに興味を持ち始めている――。そんな報告をITICの主席アナリスト、ローラ・ディディオ氏がまとめた。基になっているのはSunbelt Softwareと共同で最近実施した調査。対象となったIT責任者700人のうち、68%が「今後1年以内にエンドユーザーが会社で使うデスクトップPCとしてMacの導入を認める公算が大きい」と答えた。
「8カ月前の調査では同じ質問に肯定で答えたのは34%だったが、今回は倍に増えた。明らかに、企業がApple MacとOS X 10.xを導入する傾向は衰えるどころか弾みが付いているようだ」とディディオ氏は続ける。
これと対照的なのがMicrosoftのWindows Vistaだ。同じ調査でVistaを採用したという企業は10%にとどまり、半数近くはVistaを飛ばしてWindows XPからWindows 7へのアップグレードを予定していることが分かった。
ディディオ氏は言う。「米国市場でAppleのシェアは既に2けた台だ。調査会社にもよるが約10〜12%となっている。現実的に考えて米国でのシェアは上昇するだろう。わたしは15%前後になると予想している」
だが、Windowsが企業にこれほど浸透し、Appleは大企業への売り込みをほとんどかけていない状況で、Macは実際にどの程度、企業に進出できるのだろうか。調査では、企業の88%がWindows XPを使っていることも分かった。もしも入り込む余地があるとしたら、XPからWindows 7に移行する時かもしれない。
これは面白くなりそうだ。AppleはMac OS Xの次期バージョン「Snow Leopard」を2009年早々にリリース予定とのうわさがあり、Windows 7に先行する可能性があるからだ。
この調査は「独立した」立場から行ったもので、「最高責任者クラスの幹部とIT責任者700人」を対象にしたとディディオ氏は強調する。「ITICとSunbeltは調査の回答を確認するため、顧客との直接面談方式で20数件の聞き取り調査を実施した。ITICとSunbeltはこの調査に関してベンダーからの資金提供は一切受けておらず、調査に協力してくれた回答者も報酬は一切受け取っていない」
スポンサー付き調査全盛の時代にあって、独立性をこれほど強調しているのは珍しい。調査結果を真剣に受け止めてもらうことが重要だと思っているのは明らかだ。調査は企業のMac採用状況について、ほかにも驚くべき傾向を示している。
- 企業の77%がどこかでMacを導入している
- 企業の23%が50台以上のMacを導入している
- 企業の82%がOS X搭載のMacを「素晴らしい」「とても良い」と評価している
- 79%の企業がMac OS Xのセキュリティを「素晴らしい」「とても良い」と評価している
景気が厳しい状況の中、好意的な評価が必ずしも売り上げに結び付くとは限らない。Appleがマーケティングで企業、特にエンタープライズ向けの販売をほとんど重視していない中ではなおさらだ。
「Appleのエンタープライズへの浸透率が1988年以来最高レベルにあるという点は、論議の余地がない」とディディオ氏は言う。
しかしこの調査結果で最も重要なのは、MacよりもiPhoneについてだ。「全回答者の半数(50%)が、iPhoneなど既存のコンシューマー向けApple製品との統合を強化して、ユーザーが会社のメールなどのアプリケーションにアクセスできるようにする予定だと答えた」
「この割合は極めて特筆に値する。なぜなら相当の割合の企業が、iPhoneとMac OS X 10.x搭載Macの組み合わせは、Research In Motion(RIM)のBlackBerryの有力な対抗馬になると考えていることを物語っているからだ」とディディオ氏は続ける。
わたしは8月に、iPhoneのハロー効果はAppleがどんな企業向けマーケティング戦略を取った場合よりも手っ取り早く、企業向けの新たな売り上げ増大につながるだろうと予想したが、今回の調査はこれを裏付けるものになった。
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