前倒し仕事術──「嵐の前の静けさ」を合図に(1):シゴトハック研究所
前倒しで仕事をするにはどうすればいいのか。キーワードは、「向こう1週間の予定やタスクの確認」「長篠メソッドの応用」「嵐の前の静けさを合図に」です。
今回の課題:仕事を前倒しで進めるには?
コツ:今の時点でも打てる手があれば打ってしまう
【問題編】では、定型的な仕事は慣れてくればかなり効率よく片付けられるようになるものの、企画書作成など、不定型な仕事は、先送りしがちだったり思うように進められなかったりする、という事例を取り上げました。このように、不定型な仕事であっても、立ち止まって足踏みしてしまうことなく進められるようにするにはどうすればいいか考えてみます。キーワードは「前倒し」です。
「前倒し」で仕事を進めることができれば、常に余裕が生まれるはずです。その結果、
- 締め切り間際に感じる焦りやストレスから解放される
- スッキリとした気分を維持できるようになる
- 飛び込み仕事があっても柔軟に対応できるようになる
といった効果が期待できます。
もちろん「それが実現できれば苦労しない」わけですが、「苦労」と呼ぶほどの労力をかけなくても「それ」は「実現」できるはずです。以下は今回ご紹介するアイデアです。
- 1週間先までのタスクを見通す
- 長篠メソッドを応用する
- 「嵐の前の静けさ」を合図にする
1週間先までのタスクを見通す
週の初めに手帳やタスクリストを眺めて、向こう1週間の予定やタスクを確認するという習慣は、多くの方が実践されているでしょう。ただ、ここで確認すべきことは、「確認したぞ!」「今週もきつそうだな!」「勘弁して〜!」「がんばるぞ!」という次々と去来する“パッション”だけでなく、「今の時点でも打てる手はないか?」という“足掛かり”です。
向こう1週間分のタスクが確認できても、その直後に対峙するのは「今日一日のタスク」です。いってみれば、明日以降のタスクは今この時点では不要な情報です。にも関わらず、向こう1週間のタスクを確認するのは、
- 確認したことによって、そこから何らかのアクションが生まれるという可能性
- そのアクションを実行に移すことによって、仕事を前に進めることができるという期待
があるからです。
可能性と期待がある限りは、それを実現したいはずですから、そのための第一歩を踏み出すべく行動を起こした方がよいということになります。「今の時点でも打てる手はないか?」という質問が、この行動を引き出すためのマジック・ワードになるわけです。
漫然と手帳やタスクリストを眺めるのではなく、眺めた結果何らかのアクションを導き出し、さらにそれを実行に移すことができれば、それによって仕事が確実に進みます。導き出すのは以下のようなアクションです。
- 予告メールを出す(いつまでに何を送るかを相手にメールで宣言しておく)
- 考えるべきこと把握する(今から考え始めておく)
- 書き出してしまう(足掛かりとなる既成事実を先に作っておく)
- アウトラインメモを作る(今の時点で思いついたことを吐き出しておく)
いずれも、「その時になってからではなく今できること」という共通点を持っています。例えば、月曜日の時点で、水曜日に企画書の締め切りがあることが確認できたら、水曜日になるまで待つのではなく今すぐスタートを切ってしまうわけです。
一見同じことのように思えますが、水曜日になって初めて手を付けるよりもフライングして月曜日に始めてしまうことによって、プレッシャーが少ない中で作業を進めることができます。
長篠メソッドを応用する
1週間先までの予定とタスクを確認する中で、考えるべきことが把握できたら、一度それについてじっくり考えてみます。「じっくり」といっても5分や10分といった時間でもよいのです。こうすることで、頭の中に考えた痕跡ができますので、あとはその痕跡が通り道となって無意識のうちに考えが進むようになります。いわば「寝かす」効果が得られるわけです。
このような“準備”をしておくと、電車に乗ってぼんやりとしている時に突然アイデアがひらめいたり、本を読んだり人と話をする中で特定のキーワードに触れたときに反応できたりするようになります。
これは、「長篠メソッド」の応用です。予定した日(=敵を前にした時)に予定したアクションを実行する(=弾を撃つ)ためには、あらかじめ弾を込めておけばいいのです。
「嵐の前の静けさ」を合図にする
めったにないことかもしれませんが、仮に「今週は比較的余裕があるなぁ」ということが確認できた場合は、精神的に楽になります。でも、ここで安心しきってしまうと「余裕」を過大評価するあまり、翌週に控えている“嵐”に対する備えを十分にできなくなる恐れがあります。
当面余裕があることが判明したら、それは「嵐の前の静けさに過ぎない」と捉えて、余裕の“格付け”を一段階落とし、翌週の予定を確認することで、未来の自分を救うことができるでしょう。
そして、これを繰り返していくと、徐々に「見通すことができる期間」が延びていきます。最初は向こう1週間しか見通せなかったのが、2週間、3週間と、より遠くまで視野が開けてきます。「前倒し仕事術」の目的は、ここにあります。
冒頭で「それが実現できれば苦労しない」と書きましたが、もし「それ」を「苦労」と呼ぶとしたら、現在「よし」としていることを否定することが大変困難だと感じているからかもしれません。今の時点でも打てる手はありませんか?
筆者:大橋悦夫
仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)がある。
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