PDFの普及率高い日本、付加価値を使いこなす米国
「ビジネスパーソン以外の一般ユーザーもPDFのことをよく知っている」。そんな日本に比べて、PDFの付加価値を利用するのが米国のビジネスパーソンだという。米Adobeのリンチ上級副社長も自宅を改装する際、PDFファイルで業者とやり取りした経験がある。
以前のビジネスシーンでは、WordやPowerPointのファイルをそのままメールに添付してやり取りするのが一般的だったが、最近ではビジネス書類をPDF化することが一般的になってきたようだ。日米でのPDFの使い方には違いがあるのか――米Adobe Systemsのケビン・リンチ上級副社長(プラットフォーム事業部担当)に聞いた。
2005年のMacromedia買収に伴いAdobe Systemsに入社したリンチ氏。ちょうど当時自宅を改装しており、クローゼットの設置業者とPDFファイルで設計図面などをやり取りしたという。業者からのPDFファイルにコメントを付けて送り返し、満足いくまで交渉したのだ。そうしたやりとりは当時まだ少なく、業者側では話題の顧客だったらしい。「どうやったらPDFにコメントを書き込めるんだ。うちの会社に来て教えてくれないか」と、その改装業者の社長からは思わぬ“スカウト”まであった。
ここ数年、国内でもソースネクストやクセロなど、アドビ以外のベンダーからも安価なPDF作成ソフトが提供されるようになり、ただ閲覧するだけでなく「PDFを作成する」ことが一気に身近になってきた。リンチ氏は、「日本ではビジネスパーソン以外の一般ユーザーもPDFのことをよく知っている」と感心する。
その反面、「(日本では)米国ほど、PDFの付加価値が利用されていない」とも指摘する。リンチ氏によると、米国のビジネスパーソンは「複数のドキュメントとまとめる」機能や「PDFの操作を管理する」機能、コメントを付けたり、フィールドに入力された情報をデータベース化できる「コラボレーション」機能などを頻繁に利用しているという。
リンチ氏自身も、「さまざまな地域のマーケティングプランを1つにまとめて検索したり、各国の広報担当から集まるプレスリリースやマーケティングプランにコメントを付けたりしている」のだ。新製品の「Adobe Acrobat 8」(9月19日の記事参照)で使い始めたのは「共有レビュー」機能。作成した文書のレビューを複数の人に頼み、コメントを受け取ることができるというもので、たとえば、フォームを設置したPDFファイルをオンラインで共有すると、関係者が書き込んだコメントやデータなど、書き込んだ部分だけを一覧表示できる。サーバなどの大掛かりなシステムを導入せずとも実現できるため、手軽に使えるのが特徴だという。
「日本では無料もしくは安価なPDF作成ソフトが市場に出回っている。家庭で個人的なことに利用する分にはそうしたソフトを使うのも手だ。私も家庭ではマイクロソフト以外のオフィスソフトを使うこともある。しかし、ビジネスパーソンであれば、会社ではマイクロソフトのOfficeを利用するのではないか。同じように、職場ではAdobeのPDFソフトを使っていただきたい。ビジネスでは、情報にエラーがあった場合は大きなロスになるためだ」(リンチ氏)
リンチ氏は、「PDFファイルとして送信した内容をリアルタイムでディスカッションし、修正を加えたり、意見を交換したりといったプラットフォームを作っていくことが今後の方針。『ドキュメントと人をつないでいく』ことが重要だ」と、Adobe Systemsが目指すPDFの未来像を語った。
すでに米国で提供されているFlashベースの会議用アプリケーション「Acrobat Connect」。Adobeでは、各社員が1週間に平均3回は社内外のミーティングに利用するという。日本でも2007年に提供する予定
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