アイデアは仲間と一緒に考える【解決編】:シゴトハック研究所
諸葛亮の知恵をうまく引き出すことができた劉備と、劉備の考えを目に見える形にすることに努めた諸葛亮。アイデアを考える上で仲間の存在は欠かせません。そしてそのためのツールの1つが、「Wiki」です。
今回の課題:一人では難しい「考える仕事」をうまく進めるようにするには?
コツ:Wikiを活用する
仕事は、「考える仕事」と「手を動かす仕事」の大きく2つに分けられます。いうまでもなく「考える仕事」の方がより難しいでしょう。難しくしている理由は、2つの相容れない要因を内包しているからです。
- 時間をかけても終わるとは限らない
- うまくいくと驚くほど短時間で終わる
「考える仕事」について考えるうえで、三国志の登場人物である劉備と諸葛亮の関係を取り上げてみます。群雄割拠時代から、最終的に魏・呉・蜀の3つの国に絞り込まれた頃、「三顧の礼」をもって蜀に軍師として迎えられていた諸葛亮は、以来蜀の君主・劉備と密にコミュニケーションを交わすようになります。
軍師の役割は、現代の言葉でいえばアドバイザーということになるでしょう。どんなに優れたアドバイザーでも、そのアドバイスを生かすも殺すも自分次第です。蜀は最終的には志を全うすることなく終焉を迎えてしまいますが、そのプロセスにおける劉備と諸葛亮のコミュニケーションには「考える仕事」を考えるためのヒントがあります。
それは、諸葛亮の知恵をうまく引き出すことができた劉備と、劉備の考えを目に見える形にすることに努めた諸葛亮という2人の役割分担です。つまり、1人で考えていては決して思いつけないようなアイデアは、別の視点を持つパートナーによって、引き出してもらえることがあるわけです。
ただし、単に人が集まって話をするのではなく、意図的にお互いがお互いからアイデアを引き出し合えるようにするための方法を実践する必要があります。
考えを前に進めるために
何か形あるものをアウトプットしていく上では、記録が欠かせません。会議の場合には、その場で出た意見は何らかの形で記録に残す必要があります。ホワイトボードがあれば、その内容も必要でしょう。集まる時間がなかなか取れないということであれば、メールやメーリングリストを活用して意見交換を行うこともできます。この方法であればメールがそのまま記録になります。
ただし、記録に加えてもう1つ重要な作業が必要になります。それは「整理」です。有意義な意見交換ができたとしても、その結果を何らかのまとまった形に練り上げなければ、前に進まないからです。つまり、まとまった形を作ることによって、それが次の意見交換の素材になるわけです。こうして考えを前に進めていくことができます。
とはいえ、この整理という作業は非常に負荷が高く、スピードを求められる昨今ではなにかと敬遠されがちです。例えば、数百通に上るメーリングリストのログを読み返して、分かりやすく整理してまとめるという作業は多大な時間と労力を必要とします。
Wikiを活用する
そこでWikiを活用します。Wikiとは、メンバーが自由にページの内容を編集でき、情報の共有を手伝うWebベースのツールです。Wiki上で意見交換を行うことによって、参加している(=編集権を持っている)メンバー全員がアイデアを出す作業と同時に、自然と整理の作業も行うようになります。
このようなケースでWikiを活用することのメリットをいくつか挙げてみます。
1 メールと違って、
- 返信のプレッシャーがない(または薄い)
- 他のメールに埋もれることがない
- あとから編集することができる
2 非同期に進めることができる
- メンバーが都合のいいときに
- 思いついたときに
3 ピア・プレッシャーが生まれる
- ページ更新時にメール通知させる
- 連帯意識が生まれる
4 ほかのメンバーのアイデアが刺激になる(=モチベーションになる)
- 自分が書いた内容にレスがつけば単純にうれしい
- 意外なコメントがつくと刺激になる
- 自分では持ち得なかった新たな視点が得られる
5 修正履歴が残る
- 「やっぱり直す前の方がよかった」 → 直す前のバージョンが残る
- 「誰が書き込んだアイデアなのかが分からなくなった」 → 誰が追加・変更したのかの記録が残る
ポイントは、ある1つのテーマに関するアイデアや意見やその他連絡事項などが、すべてがこのWikiの1カ所に集約される、ということです。つまり、ここさえ見ていれば、そのテーマに関することはフォローできるという状態を実現できるのです。
なお、Wikiをすぐに活用するには「livedoor Wiki」がいいでしょう。アカウントを取ればすぐに使用できますし、閲覧メンバーおよび編集メンバーを制限することもできますので、クローズドな意見交換の場を簡単に作ることができます。
次回は、Wikiの活用方法と実践例について詳しくご紹介します。
筆者:大橋悦夫
仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)がある。
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