キャリア(生涯の仕事)を見つける:自分らしいキャリアを築くために(最終回)(2/2 ページ)
最終回は、キャリアレベルでのWhatを引き出します。子供の頃になりたかったものから、自分の天職が見えてきます。
次に、自分の「生涯の仕事」での価値観を引き出すヒントを紹介しましょう。
事柄 | |
---|---|
1 | 興味/「子供時代から現在までで、自分の好きなもの、興味関心のあるもの、没頭したことは?」「もしくは、将来、興味を持ちそうなことは?」 |
2 | 学習/「子供時代から現在までで、学んだこと、身に付けたことは?」「もしくは、将来、学びたいことは?」 |
3 | 得意/「子供時代から現在までで、得意なこと、できることは?」「もしくは、もっとうまくなりたいことは?」 |
4 | 経験/「子供時代から現在までで、経験したこと、体験した活動やボランティア、アルバイトは?」「もしくは、将来、体験したいことは?」 |
5 | 情報/「キャリアに関して、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などからの情報や通りすがりの広告で記憶に残っていることは?」 |
6 | 助言/「キャリアに関して、身内や親戚、友人や知人から言われたことは?」 |
7 | 直感/「キャリアに関して、何となく気になること、頭から離れないこと、よく目に飛び込んでくることは?」 |
8 | 影響/「キャリアに関して、影響を受けた出来事や事件は?」「キャリアに関して、影響を受けた出会いや人物は?」 |
平本 1をやってみましょう。子供時代に興味があったことは何ですか? もしくは、今は興味がないけれど、将来興味が出そうなことは?
斎藤 覚えているような、覚えていないような……。
平本 竹馬に乗ったとか、ラジオを作ったとか、百科事典が好きだったとか、地球儀をよくみていたとか、顕微鏡が好きだったとか……そういうのでいいんですよ。
斎藤 ああ、図書館が好きでした。
平本 どうして図書館が好きでした?
斎藤 本がいっぱいあるから!
平本 なぜ本がいっぱいあると、いいんですか?
斎藤 知らなかったことに、たくさん出会える場所だったので。
平本 斎藤さんは徹底して、価値観が「新しいこと」ですね。知らなかったものを知る、ってことが大事なんですね。例えば、図書館に行くけれど、本が一切読めなかったら、ダメですよね。
斎藤 それは、何をしに行くんだろう、という感じです。
平本 じゃあ、本は読めるんだけど、全部知っていることしか書いてない本だけだったとしたら、どうですか?
斎藤 いらないですね。
平本 そういうことですね。たぶん、インターネットの業界に行かれたのも、この要因があるかもしれないですね。
斎藤 それはあるかもしれません。
以上のように、これらの質問を聞いて終わり、ではなくて、「それの何がいいか」「自分にとって何が大事か」と問いかけていってほしいのです。まとめると、こういう順番です。
- 事柄を聞いて、
- 何がいいのか、
- 自分にとって何が大事? と問いかける。
例えば、ステップ1の事柄は、「図書館が好きでした」です。ステップ2、「それの何がいいですか?」と聞くと、「本がいっぱいある」と答える。ステップ3、「じゃあ、自分にとって、何が大事ですか?」と聞くと、「知らないことを吸収できるのがいいです」となります。こんな風に、それぞれの事柄に対して、この質問をしていくことで価値観を引き出せます。
こんな風にして、自分の生涯の仕事で“何が大事か”が、見つかったのではないでしょうか。そして、それを満たした未来に、どんな仕事がしたいでしょうか? ぜひ、自分の生涯の仕事に、思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
キャリアレベルのWhatを見つけて、前向きになった青年の例
ある地方都市の工場で研修をしたときのことです。工場で働いている人たちで、20代後半のリーダークラスの研修だったのですが、その中に、髪の毛が茶色くて、ジャージをずり下げて、ガムをかんで、「やってらんねーよなー」みたいな態度のB君がいました。
研修で、なぜこの会社に来たの? と聞いたら、「家が近いから」とか「女子の割合が多かったから、でもババアばっかりだった」。仕事でやりがいを感じるときは? と聞くと、「休み時間と給料日」。休みの日は何しているの? と聞くと、「パチンコとキャバクラ」と答える──。どう考えても今の仕事にやりがいを感じてなさそうな青年です。研修中も、ここでは紹介できないような答えを言い出します。始まってすぐにそんなことを言うので、その場を乱そうという以外、なにものでもありません。
さて、そんな彼も含めて研修をしていきながら、2日目の午後に、キャリアのビジョンの話になりました。10年後、何の制約もなかったら、どんな仕事をしたい? と聞いたときに、彼が手を上げました。「うわ〜、またとんでもないことだったら、どうしよう」思ったんですが(笑)、聞いてみると、実は静岡に一軒屋を借りて、板金屋さんをやりたい、と言うのです。オートバイの修理をやりたい、と。2階建ての家で、2階は自分の家で、1階が工場になっていて、バイクの修理をやりたい、というんですね。彼がそれを言うと、周りのみんなは「あいつはあんなマジメなこと、考えていたんだ」と感動して涙を流しています。私も泣きそうになりましたし、本人も泣きそうになりながら、絶対やりたい、と語っていました。
実は、板金屋さんとその工場は、なんの関係もありません。でも、「10年後に板金屋をやって、バイクの修理をしたい」というビジョンがあると、今の会社でどう働くかが違ってくるのですね。一生懸命働き始めますし、この会社でマネジメントやリーダーシップ、経営のことを学ぼうとするかもしれない。今までは休み時間しか楽しみじゃなかったのに、これからは仕事をどうしたら能率よくできるか、今のうちにノウハウを吸収して、生かそう、という気持ちになります。現職に対する姿勢が変わってくるのです。
このように、違う会社や転職を考えたとしても、Whatが明確になっていると、今の会社でのやりがいも出てきます。
今回は、生涯の仕事のWhatを引き出してみました。10歳の子供の頃、何になりたかったかを思い出しましたね。それが、そのままなるわけではありません。その中に含まれているエッセンスが、今の会社に生かされているでしょうか? そして、自分が定年になるころに、納得のいく仕事とは、どんな仕事でしょうか? 今回は、実習で「現職レベル」と「キャリアレベル」だけを扱いましたが、ぜひ、ほかのレベルもやってみてください。ご自身なりに、考えるきっかけになればと思います。
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