第13回「“やましい”と思われてもケータイをロックするべき?」:研修で教えてくれない!
「そういえば、ケータイにロックかけてるか?」「ケータイにロックなんかかけてないですよ、やましいと思われちゃうじゃないですか」──。
大手総合商社・メデア商事の新人・小林ケンタは先輩・高柳ワタルと昼食を食べに食堂に来ていた。注文を終え、食事が運ばれてくるまでの間、小林はおもむろにケータイを取り出し、いじり始めた。
高柳 そういえば、小林はケータイにロックかけてるか?
小林 えっ! ケータイにロックなんかかけてないですよ(ロックなんかしたら、彼女にやましいことでもあるんじゃないかって思われちゃうよ)
高柳 どうせ、カノジョに怪しまれるんじゃないかと思ってるんだろ(苦笑)
小林 いえ、あの、そういうわけじゃないんですけど(くっ、なぜ分かった……)
高柳 あはは。もしかして、そもそも私用のケータイって持ってないとか?
小林 一応は持ってますけど、会社のケータイに転送するようにしてあるんです(だって私用と分けると面倒くさいし)。
高柳 ってことは実際のところ、会社のケータイしか使ってないってことだな。
小林 えぇ、まぁ……。
高柳 だからだよ。
小林 だからって?
高柳 会社のケータイと私用のケータイをちゃんと分けて使っていればいいんだよ。私用のケータイにロックなんかかけたらカノジョが怪しむのは仕方ないと思うけど、会社のケータイなんだから、ロックするのは当たり前だ。怪しまれたらキチンと説明して納得してもらうしかないだろう。こればかりは普段からの行動が大事だな。
小林 えっ、でも(それは分かっているんですけど……)。
高柳 会社のケータイには、取引先の電話番号とか、業務上の連絡に使ったケータイメールだとかが保存されてんだから、これも充分に社内情報だ。
小林 それはそうですが……。でもね、でもですよ。いつも肌身離さず持ち歩いているから大丈夫かな、と……(でもこの間、便所に忘れかけたんだよなぁ)。
高柳 それでも落としたり、置き忘れたり、絶対になくさない保証はできないんじゃないか? 人間のやることなんだしな。もしそれでお前のケータイの中に保存された情報が外部に漏れたら、これは充分に「情報漏えい事故」になり得るぞ。
小林 えっ、あっ、はい、確かに……(うわあ、確かにヤバいかも。こりゃ彼女に納得させなきゃ)
高柳 それからケータイを紛失したら、遠隔操作でリモートロックかけておけばさらに安心だ。自分のケータイの操作方法をよく確認しておくといいだろう。
事業者 | サービス名 | 関連記事 |
---|---|---|
NTTドコモ | ケータイに電話する:遠隔ロック 事業者に連絡する:おまかせロック |
2002年11月 2006年4月 |
au | ケータイに電話する:遠隔オートロック 事業者に連絡する:安心ロックサービス |
2005年7月 2007年2月 |
ソフトバンクモバイル | 事業者に連絡する:安心遠隔ロック | 2007年8月 |
ウィルコム | 事業者・ケータイに電話する:リモートロック | 2005年9月 |
多くの利用者が、会社の業務で使用しているケータイにロックをかけていない。しかし実際にはケータイを落としたり、置き忘れたりして、紛失したり、場合によっては他人の手に渡ったりするケースは決して少なくない。「自分だけはケータイをなくすことはない」という思い込みは捨てよう。そして万が一紛失してもケータイ内に収められた情報が漏えいすることがないようにロックをかけることを忘れてはならない。
もし「やましい」と思われることを恐れているのなら、私用と仕事用をきちんと使い分け、仕事用のケータイにロックをかけることの必要性をきちんと説明して納得してもらう努力をしよう。
ちなみに編集部で女性スタッフ数人に聞いたところ、ほとんどがケータイにロックをかけると「あやしい」と感じるとのこと。「信頼できそうかどうか、怪しいそぶりがあるかどうかがポイント」との声もあり、日ごろの言動には注意しておこう。
どうしてもケータイにロックするのがイヤだったら、ケータイに登録する人の名前を自分だけが分かるあだ名で登録するのも方法だ。なくした時に、人名が特定できないことがポイントになるからである。もちろん、ロックをかけておくのが第一だが次善の方法を知っておくのも悪いことではないだろう。
著者紹介 山賀正人(やまが・まさひと)
セキュリティ関連の話題を中心に執筆中のフリーライター。翻訳(英語、韓国語)やプログラミング、システム構築等コンサルなど活動は多岐に渡る。JPCERT/CC専門委員。Webサイトはこちら。
関連記事
- 第12回「グループ共有パスワードの管理、どうしてる?」
プレゼン資料を作成していたメデア商事の新人・小林ケンタは、ちょうど顧客情報が必要になり、課の先輩・高柳ワタルに相談に行くところである。機密情報にアクセスするにはグループで共有するパスワードが必要になるという。 - 第11回「USBメモリの安全な使い方」
小型で軽量かつ大容量のUSBメモリはデータの保管や移動に使われることが多い。ただし、あまりに小型であるために落としてしまったり、置き忘れてしまったりする。その上、大容量であることから、紛失による影響も甚大だ。今回は、USBメモリの安全な使い方を考える。 - 第10回「転送のはずが返信に──起こりがちな“メール誤返信”の対策」
メーリングリストなどのメールを転送しようとしたら、間違えて返信してしまったことはないだろうか。そんな“誤返信”のリスクと対策を考えよう。 - 第9回「出張で教えておきたい連絡先、覚えておきたい連絡先」
メデア商事の新人・小林ケンタは、初めての海外出張を前に準備に追われていた──。出張先での業務の準備も大事だが、慣れない出張では何が起こるか分からない。万が一のときに、頼りになるのは現地担当者だったり、本国の上司だったりする。気になる連絡先はしっかりチェックしておこう。記事末尾にはチェックリストも付記した。 - 第8回「ブログやSNS、不用意に会社のことを書いてませんか」
ブログやSNSなどを通じて、個人で情報発信する人が増えている。しかし「発信した情報が誰かに読まれている」ということに対して“無頓着”なケースも散見する。メディア商事の小林君は「たまにしか更新しませんけど、趣味のサッカーのこととか書いてます」というが……。 - 第7回「情報漏えい事故発生、そのとき」
いくら対策を取っていても、情報漏えいを完全に防ぐことはできない。情報の盗難や紛失は不可抗力的な側面もあり、発生を100%防げるわけではないからだ。では、情報漏えいが発生してしまった場合にとるべき対処法はどういうものだろう。 - 第6回「情報漏えい防止は日常の生活習慣から」
「メデア商事株式会社」の営業部3課の新人・小林ケンタは、課の先輩・高柳ワタルとお客様の元に出向くところだ。電車に乗った小林に「荷物を網棚に置くなよ!」と高柳が注意する──。 - 第5回「使いたいソフトを勝手にインストールしてはダメ?」
インターネット上には多数の便利なソフトが無料で公開されている。しかし、業務のPCに勝手にインストールしていいものだろうか。なぜ「勝手にインストール」がダメなのかを考える。 - 第4回「セキュリティポリシーは何のため?」
手続きの面倒くささばかりが目立つ「セキュリティポリシー」だが、外部に情報を持ち出しする場合、ポリシーで定めている手続きに沿って持ち出した情報を“管理”することが重要だ。持ち出し情報を管理していれば、万が一、外部に情報を漏洩してしまったときの対応も早くなる。 - 第3回「自動返信メールが“危険”な理由」
大手総合商社「メデア商事株式会社」の新人・小林ケンタは、初めての有給休暇を取ることになった。休暇中、自動返信メールを設定すべきかどうか――。 - 第2回「HTMLメールはなぜダメなのか」
ちょっとメールの見栄えを良くしようと思ってHTMLメールで送ろうとしたらエラーが出ちゃって――。どうしてHTMLメールを送信しちゃダメなんだろう。 - 第1回「メールを転送しちゃダメ?」
大手総合商社「メデア商事株式会社」の営業部3課――。新人研修を終えて配属されたばかりの新人・小林ケンタがメールの設定マニュアルと“格闘”していた。 - 概論編「なぜセキュリティ対策する必要があるのか」を再考する
セキュリティ対策ってなんだか面倒くさいし、技術部などの専門部署に任せておけばいいんじゃない? 本当のセキュリティ対策は、技術部だけでがんばっても限界がある。個人からボトムアップしていくセキュリティ対策の重要性をもう一度考えてみよう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.