第36回「ビジネスで気をつけたい電子メールの“書きっぷり”」:研修で教えてくれない!
「今のメールはちょっと変だったな」「えっ? 何か変なこと書いてましたか?」「メールの本文自体はいいが、書き出しがおかしい」――。
大手総合商社・メデア商事の新人・小林ケンタは朝一番で、取引先へメールを送った。すると、ccでそのメールを受け取った課の先輩・高柳ワタルが小林の席にやってきた。
高柳 おい、今のメールはちょっと変だったな。
小林 えっ? 何か変なこと書いてましたか?
高柳 メールの本文自体はいいが、書き出しがおかしい。
小林は慌てて送信済みのメールを見てみた。
高柳 いきなり「おはようございます」ってあったな。
小林 だって朝一番ですから挨拶は当然かと……。
高柳 そうだな、ちょっとメールの仕組みを考えてみよう。
ケータイメールの普及により、「メール=即時性のあるコミュニケーション手段」というイメージを持っているユーザーが少なくない。しかし本来メールに「即時性」などない。通信経路の状態によっては配信に遅延が発生することは珍しくないし、そもそも相手がメールを読むのがいつになるかは完全に相手の都合次第だ。
送る側は朝一番で送っても、相手がそのメールを読むのは夜中かもしれない。いつ目にするか分からないものに「おはようございます」や「こんばんは」といった明確に時間帯の意味を含む挨拶を含めるのはあまり意味がない。もちろん、こちらが「おはようございます」や「こんばんは」といった時間帯にメールを作成していることをお知らせできる――という効果はあるが。
小林 あっ、そうか……。
高柳 ケータイメールと同じ感覚で書いてるんじゃないか?
小林 そんなつもりはなかったんですけど、言われるとそうかもしれません……。
高柳 ビジネスメールも、基本的にはビジネス文書と同じだ。特に口頭で話したものとは違って、「証拠」や「記録」として残ってしまう。だからヘタなことを書くと危ない場合もある。少なくともビジネスメールを書くときには、友達同士でケータイメールをやりとりするような気軽な気持ちで書いちゃダメだ。
小林 それは研修でも散々言われているので分かっているつもりなんですが……。
高柳 だよな。メールは同時に手軽なコミュニケーション手段でもある。だから正式な紙のビジネス文書ほどかた苦しく書く必要はないし、相手との関係の親しさによってはフランクな表現を使っても構わない。ただ、絶対に間違えてはいけないポイントというのがあるんだ。それさえ気をつけていれば基本的には大丈夫だろう。
ビジネスメールをどのように書くべきかの判断は実のところ難しい。正式なビジネス文書に近い形できちっと書くべきと考える会社もあるし、ある程度くだけた表現でも可としている会社もある。そもそもメールで用いられる日本語は一般的に話し言葉と書き言葉の中間にあるため、その「加減」が難しいのだ。
まずは会社の同僚、先輩達がどのような文体を用いているか、よく観察し、それをまねるのがよいだろう。
しかしどのような文体であれ、ビジネスで用いている以上、絶対に間違ってはいけないポイントがある。そのポイントはいくつかあるが、最低でも、
- 主体(誰が)
- 日付(日程、期日など)
- 数字(金額、個数など)
といった事項は明確にかつ正確に記す必要があるだろう。
著者紹介 山賀正人(やまが・まさひと)
セキュリティ関連の話題を中心に執筆中のフリーライター。翻訳(英語、韓国語)やプログラミング、システム構築などコンサルなど活動は多岐に渡る。JPCERT/CC専門委員。Webサイトはこちら。
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