「ツレうつ」的闘病のコツ――あきらめてラクに【治療開始編】:もう大丈夫、あなたを救う「うつ対策119番」(2/2 ページ)
ある日突然、自分のツレ(夫)が「死にたい」とつぶやいた――。『ツレがうつになりまして。』は、そんな彼のうつ闘病生活を、妻の細川貂々さんがユーモラスにつづったマンガだ。夫婦に聞いた実体験から、今回は発覚〜治療開始時のコツを紹介しよう。
合併症の可能性あり。内科そのほかも受診すべし
ツレさんによると、「統計ではうつになる人には、医師の言う通り、薬の量をキッチリ守って服用する神経質な人が多くて、糖尿病になる人には、どちらかと物事をアバウトに考える性格の人が多い」。
この話だけを聞けば、性格が正反対の糖尿病患者がうつ病患者になったり、その逆になったりするケースは少ないと思うだろう。ところが糖尿病患者がうつ病になるケースが少なくないという。
「ホルモンバランスの崩れから来るらしいんです」と、細川さん。糖尿病は、インスリンがうまく作用せずに血糖値が上がってしまう病気だ。おまけに透析や食事の制約のために、患者の精神を追い込みがちだ。その結果、ホルモンバランスが崩れたりすることもあるという。この場合うつと診断されたとしても、それは糖尿病に起因するものだから、糖尿病も一緒に治さなければならない。
細川さんはさらに、「顎(がく)関節症の方も、ホルモンバランスが崩れてうつになるケースが多いそうなんですよ」と続ける。あまり聞いたことがない病名かもしれない。顎関節症は、歯のかみ合わせが悪く、顎の関節がゆがむことにより頭骸骨もゆがみ、頭痛がしたりイライラしたりするものだ。自律神経失調症やうつを併発するケースが少なくないという。
「体調不良の人は、うつと一緒になにかほかの病気にかかっている可能性があるから、内科などでも調べてもらったほうがいい」と、2人は口をそろえる。うつにかかったら、合併症も疑え――というわけだ。
では実際に受診して「うつ」と宣告された場合、どんな心構えで治療していけばいいのだろう。
一生つきあう。そんな覚悟で気楽に臨め
「本人も家族も、もう一生治らないってあきらめておけばラクですよ」と細川さん。ツレさんが「希望は持っちゃダメです。持ってしまうと、余計つぶれてしまいますから」と付け加える。その真意はなんだろうか。
うつの人には「がんばれ」と励ましてはいけないといわれている。本人の中では「がんばらないといけない」というプレッシャーに変わり、追い込まれてパニックを起こす可能性があるからだ。
「病気が治る」という希望を与えることもこれと同じ。本人は「治さないといけない」と、過度のプレッシャーを感じてしまい、治らない自分に絶望して「死を意識してしまう」と、ツレさんは言う。だから、目標を定めて追い詰めてはいけないのだ。
うつの治り方には「揺り戻し」というものがある。「良くなったかと思えば、悪くなったりするんです」と、細川さん。振り子のようなこのサイクルを繰り返し、ゆるやかに快方に向かうのだ。だから症状が良くなり、希望が持てた次の日に悪くなったりすると、本人も身近な人も精神的に参ってしまう。2人はこの「揺り戻し」に一喜一憂した。
だからこそ「いっそ治らないとあきらめた方がいい」という言葉が出てきた。治らないと絶望してほしいわけではない。「ちゃんと治そう」と肩の力を入れてしまい、「揺り戻し」で症状が悪化したとき、精神的なショックを受けてしまった――そんな苦い経験から生まれた、肩の力を抜いてうつと向かい合うための知恵である。「まあ、あきらめて、ラクに治療してみようよ」。2人はそう言っているのだ。
細川貂々(ほそかわ・てんてん)
マンガ家・イラストレーター。1969年生まれ。セツ・モードセミナー在学中に将来の伴侶(ツレ)と出会い、卒業後に結婚。夫と息子(0歳)、ペットのイグアナたちと暮らす。
2006年3月、うつになったツレの闘病を描いた『ツレがうつになりまして。』(通称『ツレうつ』)を幻冬舎より発刊。大反響を呼び、マンガ家としてブレイク。その後、2006年12月に『イグアナの嫁』(幻冬舎刊)、2007年11月に『その後のツレがうつになりまして。』(幻冬舎刊)などを発刊。
そのほか『かわいいダンナとほっこり生活』(ゴマブックス刊)、『いろはにいぐあな』(集英社刊)、『きょとんチャン。』(メディアファクトリー刊)、『きょとんチャン。一歩前へ』(メディアファクトリー刊)、『どーすんの? 私』(小学館刊)などマンガ著書多数。
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