ブロガーがうつの“駆け込み寺” ネットでリアルに助け合い:もう大丈夫、あなたを救う「うつ対策119番」(2/2 ページ)
「“うつ”に悩む方々のためのブログ」は、24時間いつでも駆け込める「心の避難所」だ。身近には助けてくれる人がおらず、孤独に陥っている人などが駆け込んでくる。避難所の皆で苦しみを共有・共助して立ち直っていくという「ブログ療法」を紹介しよう。
まさかのうつ発症経験、「ブログ療法」につながる
現在、「意識構造/社会構造アナリスト」という肩書きで活動中の野口さん。これまで専門誌の編集や人材派遣、システム開発などに従事してきた。激しいうつに襲われたのは20年以上前。子どもが生まれたばかりで働き盛りの32歳だった。ある日突然、「激しい心の揺れ」に襲われて倒れる。当日も直前まで普通に働いていたが、急遽入院、休職、退職して療養したという。「まさか自分がうつになるなんて全く思わなかったですね。俺の頭はどうなっちゃったんだろう、これは自分じゃないってパニックになりました」
野口さんの知る限り、薬を処方する医師は体の症状には対応するが心はケアしてくれない。かといって心をケアするカウンセラーは、話はよく聞いてくれるものの、具体的な解決策を提案してくれない。もどかしさを感じた。
そこで「具体的な解決ツールが必要だ」と思い立った野口さんは、自分の実体験などを元にうつ病を客観的に分析。その結果、「ブログ療法」というツールが効果的なのでは、と思うようになった。
うつを経験したら強く、優しくなる
ブログ療法については、野口さんが書いた「『うつ』なこころを強くするブログの力」(明日香出版社刊)に詳しい。そのほか2005年10月に「『うつ』な人ほど強くなれる」(同)、2006年11月に「『うつ』な人ほど優しく強くなれる」(同)などを出版し、反響を呼んだ。このタイトルの真意は――。
「発症当事は分かりませんでしたが、今考えるとコミュニケーション能力がなかったことが原因ですね。そのころは仕事のできない人間をスパッと切り捨てて前進するタイプでした。『付いて来い、じゃなきゃぶった切るぞ!』って。リーダーシップを完全に吐き違えてました。それで気が付くと誰もいなくなって……絶望したんでしょうね。うつになって初めて人の心の痛みが分かるようになりました。だから後ろを振り返って、人の痛みを察しながら進むようになりましたね。優しくなったと思います。優しいと自然に人が付いてくるからリーダーシップを取れる。だから強いんです」
もともと自分が強い人間だという自覚はあった。「うつでもっと強くなりましたね。うつの苦しみに比べたら、ほかの苦しみなんてどうってことないですよ」。そんな野口さんでも、いまだに症状が出ることがある。「年2〜3回。震度3くらいかな。でも日常はちゃんとこなせますから大丈夫です」
今後は北海道や沖縄など全国7〜8カ所に、誰かの家ではない正式な避難所を作る予定だ。「だって自然の中にいたら、気持ちが晴れるしょう? 全国に7〜8カ所作りたいですね。もし協賛できる方がいたらぜひご連絡ください」。その後はどうするのだろう。「あとは後進の人たちに任せるかもしれません……まだ未定です」。ブログ開設から2年。バーチャル、リアルの避難所を作り、治療の仕方を標準化し、人材を育成する――そんなうつ病全面サポート体制を実現するために奔走する日々は、しばらく続きそうだ。
パートナーや家族などが回りにいなかったり、いても「甘えてる」などと言われてしまい、理解が得られない人、孤独な人には、バーチャルな「ブログ療法」が、リアルな救いの手になるかもしれない。
関連記事
- 「ツレうつ」的闘病のコツ――ムカつくけどしょうがない【最終回・社会復帰編】
「全部うつのせいにしちゃえ!」――死にたくなる衝動をそう乗り切れと説いた前回。いざ職場復帰した時の心構えは? 職場のみんなはどう接すべき? 今後の生き方は――? 最終回は尽きない疑問符を、可能なかぎり解き明かそう。 - 「ツレうつ」的闘病のコツ――死にたくなったら「病気のせい」【回復期編】
「できなくて当たり前」の精神で、妻の細川さんが、うつになる前のようには立ち回れない自分のツレ(夫)を辛抱強く見守った前回。そのかいありツレさんは次第に快方に向かうが……。 - 「ツレうつ」的闘病のコツ――できなくて当たり前【治療中期編】
「会社を辞めないと離婚!」――夫に対し、そう言い放ったのは、細川貂々さん。ツレ(夫)の闘病生活をつづった『ツレがうつになりまして。』のマンガ家だ。前回は、うつと診断されたツレさんが「あきらめてラクに」治していこうと決めたが……。 - 「ツレうつ」的闘病のコツ――あきらめてラクに【治療開始編】
ある日突然、自分のツレ(夫)が「死にたい」とつぶやいた――。『ツレがうつになりまして。』は、そんな彼のうつ闘病生活を、妻の細川貂々さんがユーモラスにつづったマンガだ。夫婦に聞いた実体験から、今回は発覚〜治療開始時のコツを紹介しよう。 - 原因は上司のパワハラ? 部下の能力不足? 職場の人間関係とうつ
職場の人間関係の中でも、上司と部下間のトラブルには、うつにつながるパワーハラスメントなどのケースが増えているようだ。部下のうつが一見、上司のパワーハラスメントが原因に見える場合でも、実は部下の能力が起因していることもある。その際の対応について見ていこう。 - メンタルヘルスの社内教育
ここ数年、メンタルヘルスへの取り組みは企業の大きな課題となっている。各企業でさまざまな対策が取られてはいるものの、過重労働や職場の人間関係などのストレスにより、うつになる人があとを断たない。この現状を改善するために総務ができることとは? 改めて考えてみよう。 - うつ病・うつ状態の可能性があるのは、約8人に1人
うつ病の可能性がある人で、実際に病院で受診した人はどれだけいるのだろうか? これまでに医療機関で受診したことがある人は3割以下と、受診率の低さが明らかになった。ファイザー調べ。 - 職場での「心の健康管理」貢献に期待――「メンタルへルス・マネジメント検定試験」
2006年に誕生して以来、メンタルヘルス対策の一環として取り組む企業が増えているという「メンタルへルス・マネジメント検定試験」。その概要と活用実態を見てみよう。 - 悩める「プチうつ」にお絵かきアートセラピー
気分がふさぎがちで治らない。でも病院に行く一歩が踏み出せない――そんな「プチうつ」時に気軽に参加できるのが、一般向けに開放されたアートセラピーのワークショップだ。最近では企業研修でも導入されるようになったアートセラピーに迫る。 - コツは呼吸と半眼、“カンタン座禅”でいつでもどこでも集中する
4月25日まで開催中の早朝イベント「朝EXPO in Marunouchi 2008 spring」。23日の朝は、初心者向けの朝座禅の体験会に赴いた。座禅は集中力を高めるのに役立つ。通勤電車やオフィスなど、場所を問わずいつでも実践できる方法を紹介しよう。 - 脱・不眠――電子念佛機に癒やしのループ音を入れたプレーヤー「ブッダマシーン」
4月2週目に突入した。緊張しどおしの仕事から開放された帰宅後も、“バタンキュー”どころか神経が高ぶって寝つけない。そんなとき緊張をほぐしてくれるかもしれない、小型スピーカー付きのポータブルプレーヤー「ブッダマシーン」を紹介しよう。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.