第5回 ポスト・飲食店メニューのカロリー表示? 「フードマイレージ」:みんなで作る地球のあした、企業発“巻き込みエコ”最前線(2/2 ページ)
パスタ好きな筆者が、先週食べたイタリア製パスタは4食。これがもし国産なら――大地を守る会のWebサービス「フードマイレージ・キャンペーン」で調べると、長距離輸送分のCO2を約2ポコ(POCO)削減できたという。Web上や宅配利用者用カタログに、ポコという独自単位でCO2削減量を示す狙いは?
そこで考案したのが「CO2排出係数」という係数。「トン・キロメートル」にこの係数を掛け合わせると、CO2排出量をグラム単位で算出できるものである。
フードマイレージとは?
- フードマイレージ=食料の重さ(トン)×距離(キロメートル)
- フードマイレージから計算したCO2排出量=食料の重さ(トン)×距離(キロメートル)×排出係数(グラム/トン・キロメートル)
※輸送手段ごとの排出係数は異なり、貨車21、船38、トラック167、飛行機1510
こうしてCO2排出量がグラム単位で計算できるようになった。さらに守る会では、「もっと身近に分かりやすくするため」、ポコという独自単位を作った。ポコはグラム単位で出たCO2排出量を100で割って桁数を小さくする。
ポコとは?
マイレージから計算したCO2排出量(ポコ)=マイレージから計算したCO2排出量(グラム)÷100
例えばCO2排出量が100グラムは1ポコとなり、500グラムなら5ポコとなる。イタリア産パスタ好きな筆者を例にとってみよう。
イタリアのパルマから東京まで輸送したときのCO2排出量から、北海道から東京まで輸送したときの排出量を引けば、その差が出てきて「国産にしたら削減できたCO2排出量」が出てくるはずだ。計算してみよう。
筆者のいる東京までの輸送距離は、パルマからは1万6858キロメートル、北海道からは831キロメートルだからその差は1万6027キロメートル。1食分は80グラム、輸送手段は船とすると係数は38だ。これを上の計算式、「フードマイレージから計算したCO2排出量」に当てはめて、16027キロメートル分、削減できたCO2排出量を計算してみると――。
0.00008(トン)×16027(キロメートル)×38(グラム/トン・キロメートル)=548.72208(グラム)。さらに48.72208(グラム)÷100=0.4872208(ポコ)となる。小数点3位以下を四捨五入すれば約0.49ポコ。4食分なら4倍だから1.96ポコ。これが本文冒頭で出てきた数字だ。
今回は1つの式でCO2排出量の差を計算することができたが、もし輸送手段が異なる場合は、先に1カ所ずつの排出量を求め、さらに2つの排出量の差を計算することになるから、計算は結構面倒だ。これらを自動的に計算してくれるのが、Webサイト上の「フードマイレージキャンペーン」である。
ただし算出できるのは主要な70品目のみに限られる本格的に活用するには品目不足だ。だが、「フードマイレージの名前を浸透させるのが目的」だから、今のところ品目数を増やす予定はないという。
またフードマイレージの計算法では、1回当たりの輸入量や単位などにより誤差が生じる可能性がある。極端な例で言えば、1トンを100回に分けて船で運んでくるのと1回で運ぶのでは、100倍もの差が出てしまう。「ある程度どんぶり勘定ではあるんですよ。それでも何もないよりは目安になりますよね」と、大野さんは答える。あくまで目安なのだ。
ともあれ、2001年時点では「100億トン・キロメートル」といった大きな数値でしかフードマイレージの目安はなかった。「これでは生活を変えるキッカケにはならない……」と、生活に密着した分かりやすい単位に改良していったのが、守る会の提唱するポコという考え方。2ステップ目は、身近な肌感覚レベルまで噛み砕いたことだった。
ステップ3:「少しずつ着実に」
次なるステップは、自分の行動がどれだけCO2排出しているかを日常の中で知ってもらうことだ。
守る会では宅配利用者に毎週送っている請求書内で、「今週あなたが減らしたPOCO 3.8POCO」という具合に、CO2の削減量を具体表示をしている。実際に自分が国産の食べ物を選択したことで、どれだけCO2排出削減に貢献できたかを目立つように記載し、浸透と理解を深めようとしているのだ。
今後は商品カタログにもポコ表示を掲載していくという。「ポコを参考に注文する習慣が付きますよね」と、大野さん。「もちろん、すぐには効果が出るわけではないですが、最近は近くで収穫したものならポコが増えるから、積極的に近くで収穫した食料を選んで購入する人が増えた」という。3ステップは習慣化を促すことだった。
守る会では今後、カフェを開店する予定だ。「レストランのメニューにカロリー表示ってありますよね? あれと同じ感覚でポコ表示をしたいんですよ。そうすれば注文する前に『これを注文すればこれだけCO2排出を削減できるのか』という、事前判断材料になります。そこまでポコを根付かせたいですね」
なんともかわいい響きを持つポコという言葉。由来は「ドライアイスを水の中に入れると、ポコポコと泡が出る様子」と、「POCO A POCO」というイタリア語から。「POCO A POCO」とは「ちょっとずつ、少しずつ」という意味である。
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