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「衝動買い」や「無駄づかい」が起きるわけシゴトハッカーズ(3/3 ページ)

無理したり苦労したりしないで貯金ができれば、それにこしたことはありません。そのためのちょっとした工夫を、実践体験に基づいてご紹介します。

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選好逆転に気をつける

 寒い日、駅からの帰宅途中、コーヒーが飲みたくなったとします。どこかの自動販売機で缶コーヒーを購入しても良いのですが、自宅まで我慢して、ホットコーヒーをいれれば、安くて、しかも上質のコーヒーにありつくことができます。だから自宅までは我慢しようと考えるでしょう。

 しかし、帰宅途上で自動販売機を見つけてしまうと、最初の我慢しようという決意もむなしく、つい120円もする缶コーヒーを買ってしまうかもしれません。これを経済心理学の用語で「選好逆転現象」といいます。

 こうしたことが起こるのはもちろん、即座に得られる快感と、将来まで我慢した場合に得られるもっと大きな快感とを天秤にかけたとき、状況次第でどちらを選ぶかの判断が、変わってくるからです。

 一般的に言って、例えば、1年後に1万円が得られる選択肢と、1年と1カ月後に1万1000円が得られる選択肢であれば、多くの人は1年と1月待って、1000円多くもらおうとします。

 しかし、明日1万円が得られる選択肢と、ひと月待って1万1000円がもらえるという話になりますと、明日の1万円が選ばれる傾向があるのです。

 すなわち、近い未来の快感と、遠いがより大きな快感が得られる場合に、どちらもかなり先の将来における報酬であれば、人はより遠い将来の、より大きな報酬を選択する傾向があります。一方で、報酬を得る時期が非常に近くなると、目先の利益に引きずられやすくなるわけです。

「衝動買い」や「無駄づかい」が起きるわけ

 ほとんどの「衝動買い」や「無駄づかい」は、この「選好逆転現象」によって引き起こされるものです。逆にいえば、「選好逆転現象」さえ抑えることができれば、貯金はうまくいくものなのです。

 「選好逆転現象」に対抗して、遠い将来の大きな利益を選択する方法が、経済心理学的にいくつか提案されています。重要な方法の1つとして、直近の報酬から注意をそらすことがあげられます。目の前に自動販売機が現れなければ、缶コーヒーに手を伸ばさずに済むというやり方です。

 生活の広い範囲にこれを応用するなら、ショッピングに行かない、広告を見ない、ということになるでしょう。テレビを見ても雑誌を見てもインターネットを見ても、すぐにありとあらゆる商品が目に飛び込んでくるのは、「選好逆転現象」を誘発するための、マーケティング側の努力に他なりません。

 もう1つが、「先行拘束」という考え方。私(佐々木)がキャッシュカードを破棄してしまったのなどは、この考え方に基づくものです。「衝動的な行為」を取ることが非常に手間のかかるものになれば、もはやその行動を「衝動的」にはとれなくなってしまうというわけです。大橋さんが、パートナーと協力して、出金を容易にできなくしているのも、これの応用です。

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