火、水なしでも「あったかごはん」 イマドキ非常食を作って食べてみた:「いざ」への想定力が決め手、企業の震災対策&グッズ(3/3 ページ)
ライフラインが途絶えても「あったかごはん」になるという非常食。紹介記事で推奨した通り、非常食購入を検討する企業の備蓄管理者になったつもりで、実際に作って食べてみた。
カレーを試食する他編集部の記者。1口ほお張ると「意外においしい! 具もゴロゴロ入っている」と笑顔を見せる。この表情から味の感想が伝わるだろうか。
さらに、「そこらに売ってる普通のレトルトと変わらない」と牛丼を気に入った様子の別の記者は、レンゲを口に運ぶ手が止まらなかった。
筆者の手が止まらなかったのは、フリーズドライの状態のままのシチューである。
メインのカレーなどができあがるのを待つ間、待ち切れず思わずつまんだところ、塩加減が絶妙なスナック菓子のようで、1度食べ始めると止まらなくなってしまったのだ。お陰で缶の置いてある前を通過するたび、手を出す羽目になった。
この“スナック菓子”に対して「お酒が欲しくなりますね」とコメントした記者もいた。シチューで多くあった感想が「鶏肉がしっかりと噛みごたえがある食感」というものだ。また、味噌汁では「ダシがしっかり効いていておいしい」という意見が多かった。
試食した記者たちの口から一番よく出てきた言葉は、「意外においしい」だった。非常食は、まず食べられればよく味は二の次。そんなイメージを抱きがちだからこそ、こうした感想につながったのかもしれない。筆者自身もカレーライスをほお張った瞬間、「あれ、意外においしい」と、思わず口にしていた。
ホリカフーズは「とにかく普段と変わらない食事」という主旨のもとレスキューフーズを開発をしたという。コメントの限りでは、メーカーの狙いは当たったようだ。
非常食と日常食は、どう違う?
また、試食してもらった記者たちから上がった素朴な疑問は、「非常食って日常の食事とどう違うの?」というものだ。同じ疑問を抱く読者の人もいるだろう。
確かにレトルトや缶は近所のスーパーに行けば手に入るから珍しいものではない。しかもこの製品は賞味期限は2年半。5年や10年保存できる非常食に比べれば、保存期間がとりたてて長期ではない。だから違うのは、ガスも電気も止まり、火も起こせないし電子レンジも使えない制約された状況下でも食べることができるよう工夫されている食品――という点なのである。
レスキューフーズは、付属の発熱材と発熱溶液を使える点。サバイバルフーズは、湯を注ぐだけ。湯がなければ水でもいいし、水もなければそのまま食べてもかまわない点と、長期保存可能な点などが、非常食としての役割を果たしているのではないだろうか。
携帯性とコスト面が課題!? イマドキ非常食事情
ただ、携帯性を考えると「少ない量でもカロリーが高いチョコレートが非常食に最も適しているのかもしれない」という意見が記者たちから出た。例えばチキンシチューは個包装にしてもらえたら、もともと軽いから携帯性が増すだろう。
また、価格はチキンシチューが8820円、レスキューフーズが3328円する。シチューは20杯分として1杯441円、レスキューフーズは1食約1109円。安いとはいえない。例えばレスキューフーズは、発熱材と発熱溶液があれば、ほかのレトルトなどでも使えるから、発熱材・発熱溶液を別売りにしてもらえると経済的かもしれない。
ともあれイマドキの非常食は電気、水道、ガスもない中で手軽に「あったかごはん」にありつけ、おまけに「意外においしい」ことが判明した。
せっかく防災意識が高まる9月、いつものランチにこうした非常食を食べてみるのも悪くない。筆者ももちろん――
「いっただっきまーす!」――なのである。
*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***
関連記事
- 「いざ」への想定力が決め手、企業の震災対策&グッズ
- 半永久的に持つ!? 「生き延びる」ための非常食
もしも仕事中に巨大地震に襲われたら――。首都圏では公的支援を受けられるまでに約8日間かかるという。その間、帰宅難民となり社内でサバイバルしないといけなくなったら、先立つものは水と食料だ。備蓄管理のコツは? - わずか4年で3度も被災 コロナの「生きた」事業継続計画とは?
わずか4年の間に震災2回水害1回と、3度も大きな自然災害に見舞われた企業がある。新潟県の住宅設備機器メーカーのコロナだ。コロナが被災経験から導き出した、従業員の家族や地域ぐるみの「生きた」事業継続計画(BCP)とは? - 人手や資金不足でも――「できることから始める」中小企業の事業継続計画
人手や資金の問題から、中小企業はBCP(事業継続計画)の策定に二の足を踏みがち。そんな中、BCP策定はもちろん、Webサイトを活用した安否確認システムを開発した企業がある。大同情報技術だ。その取り組みを見てみよう。 - 緊急地震速報が間に合わなかったら――頼りは四角い「なまず」
2007年10月から一般への配信も始まった緊急地震速報。実は震源地から近すぎると、配信が間に合わない場合もあるという。そんな時、頼りになるのが「デジタルなまず」。さらにAEDなど、オフィスに備えておきたい機器を紹介する。 - 緊急地震速報が間に合わなかったら――頼りは四角い「なまず」
2007年10月から一般への配信も始まった緊急地震速報。実は震源地から近すぎると、配信が間に合わない場合もあるという。そんな時、頼りになるのが「デジタルなまず」。さらにAEDなど、オフィスに備えておきたい機器を紹介する。 - 重要データは“箱の中” 摂氏800度にも耐えるメディア保管庫
セントリー日本は、USBポートを搭載した耐火・防水機能付きメディア保管庫「QA0121」を発表した。本体内部にポータブルHDDやUSBメモリなどを入れたままで、PCからのデータアクセスが可能だ。 - 「しがみつくのがやっと」の大地震 脱出と救助の“三種の神器”
大地震発生時はしがみつくのがやっと。避難経路を確保するためドアを開けにいく余裕はないという。揺れが収まり、気付けば室内に閉じ込められてしまった。同僚が下敷きになっている――。そんな事態を想定し、事前策を考えてみた。 - 揺れてる中でもサッとかぶれる? 命を守るヘルメット
大地震が来るかもしれない。そう頭で分かっててもどうも危機感がない――なんていう人も多いだろう。従業員のこうした防災意識を踏まえ、企業はどう震災対策すればいいか。オフィスにいる時大震災が来た――と想定して考えてみた。 - 防災ヘルメットなのにぺしゃんこ おにぎり型「タタメット」って知ってる?
防災ヘルメットはオフィスに備えておきたいが場所を取る。かといってたためる布製帽子は肝心の防災面が不安……。そんな一長一短を解決しそうなのが、三角おにぎりの形が落下物を滑らせるという「タタメット」。普段はたたんでファイルできる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.