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第19回 「量感」を身につけるための“メンタルモデル”ってなんだ?:実践! 専門知識を教えてみよう(3/4 ページ)
サッカーのペナルティエリアの面積は何坪でしょう? すぐに分かる方、いますか。こうした「量感」を身に付けるために大切なことが、現実世界と表象と“メンタルモデル”の連携なのです。
脳内で積み木遊びをやってみよう
ここで質問ですが、みなさん、
- 頭の中で積み木遊びをやってみたことはありますか?
もちろん、「積み木遊び」というのは、小さな子供の遊び道具のあの「積み木」のことです。
また、わけの分からないことを聞きやがってと思われそうですが、実はこれ、かなり真面目な質問なのです。頭の中で積み木遊びをする、というのは要するに、
- 現実世界の「積み木」を使わずに、頭の中のメンタルモデルだけを使って積み木を積んだり崩したりして遊ぶこと
です。これができるようなら、
- メンタルモデルの操作能力が高い
ということを意味しますので、「表象」を使って現実世界のことを考えるのも楽になります。逆にこれができないと、「表象」を操作してもそれが現実世界およびメンタルモデルとリンクしないため、
- 計算はできるのに、その式が何を意味しているかはまったく分からない子供
ができ上がってしまうわけです。実際そのような事例が前述の参考書籍『お母さんは勉強を教えないで』にはいくつも紹介されています。
おそらく、これまでの教育体制の中ではこの「メンタルモデルの操作能力」に対する特別なトレーニングというものは行われてこなかったのでしょう。代わりに何があったかというと、
- 小・中・高・大と進むにつれて、
- 学習する「現実世界」のテーマがだんだんと高度なものになり、
- 使う「表象」も抽象度が上がっていくため、
- それに伴ってメンタルモデルの操作能力が自然に向上するのに任せていた
ということだろう、と私は個人的に推測しています。
ですが、それでは「自然に向上するのに任せる」わけですから、かなりのバラツキが出ますし、うまく行っているかどうかも分かりません。そろそろ意識的なトレーニングを行うべき時代が来ているのではないでしょうか?
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