「保険会社のWebサイト」を面白く――顧客目線のRIAとは
操作性が高く、表現力豊かなインタフェースを持つと言われるRIA(リッチインターネットアプリケーション)。企業と顧客、双方にとって魅力的なRIAとは――。
「あなたが考える中で、最も退屈なアプリケーションというのを想像してみてほしい。保険会社のアプリケーションなんてどうだろう、いかにも退屈そうでしょう?」――そう話したのは、米Adobe Systemsでクリエイティブソリューションズを担当するバイスプレジデント、ジョン・ロイアコノ氏。アドビシステムズの事業戦略説明会で、RIA(リッチインターネットアプリケーション)の今後について説明した場面での発言だ。
RIAとは、FlashやJavaScriptといった技術を使って作られたWebアプリのこと。操作性が高く、表現力豊かなインタフェースを持つといった特徴で語られることが多いが、「単に見た目が派手なだけで、読み込むのに時間がかかる重いコンテンツでしょ」という印象を持つ人もいる。RIAの今後を考える上で、ロイアコノ氏が1つの好例として紹介したのが、米国の自動車保険会社AllstateのWebサイトだ。
アクセスするとFlashによるコンテンツを表示する。ガレージに人が現れ、バイクを組み立て始めるというものだ。組み立て中のバイクをクリックすると、ユーザーがフレームやホイール、ボディカラーを選んで、自分好みのバイクを組み立てられる。作ったバイクは、作成者とバイクの名前を登録して、サイト上の“ショウルーム”に展示できる仕組みだ。
ガレージの壁に貼ってある地図をクリックすれば、Googleマップをベースにした地図上で、米国、メキシコ、カナダなどをバイクで旅するロードマップを立てられる。カレンダーには最新のイベント情報が、貯金箱にはディスカウント情報と、「とてもじゃないが、典型的な保険会社のWebサイトには見えない」(ロイアコノ氏)。
こうした娯楽性の高いコンテンツを用意する一方で、ユーザビリティの高いインタフェースを目指している。見積もりを取りたいときは、左手前に目立つ黄色で置いてある「GET A QUOTE」のパイロン(の形をしたアイコン)をクリック。電話のかかった柱には電話番号が書いてあり、クリックすれば自分の地域を担当する保険のエージェントを確認できる。
「みなさんは、Webサイト上でバイクを組み立てられることの何が重要なのか、と思うかもしれない。真に重要なのは、娯楽的な要素も含みながら、顧客が求めるリアルなデータも提供し、顧客と関係を築いていくことだ」
AllstateのWebサイトのビジターは、バイクを組み立てるのに約10分、サイト全体を閲覧するのに平均して約15分をかけているという。「ビジターはWebサイトを閲覧しているのか、インタラクティブなアプリを使っているのか、広告を見ているのか――答えはすべてイエスだ」
「Allstateは、各ビジターが必要とする情報と関わりを持ちながら、広告を長時間見せるという目的を達成した。製品やサービスを、ユーザーが魅力的だと思う見せ方で伝えることが、Adobeが繰り返し言ってきた“人と情報との関わりを変革する”ということなんだ」
ロイアコノ氏によれば、現在インターネットの世界で起きている変革は3つある。「クライアントとクラウドの融合」「ソーシャルコンピューティング」「あらゆるデバイスでのコンテンツ提供」だ。「リッチなアプリケーションというのは、クライアント、すなわちアプリケーションと、バックグラウンドにあるネットワーククラウドとの融合によって生まれる」
デザイン用アプリケーションソフトの統合パッケージ「Creative Suite(CS) 4」では、ユーザーに魅力的だと思われるようなRIA作成のための新機能を多く搭載したという。ロイアコノ氏は、「ユーザーがCS 4に盛り込まれた新機能を見て『ワオ!!』という反応をしなければ、我々は職務を全うしたとは言えないだろう」とまとめた。
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