「太郎、お酒持ってきなさいよ!」――銀座のママも実践!? 相手の意表を突く:一目置かせる「役割別ビジネス会話」
会話相手が上司なら部下として、妻なら夫として――私たちは常に相手に応じた「役割別ビジネス会話」を交わしている。そして、どんな相手にも効果的な方法が、銀座のママも実践しているという「相手の意表を突く」なのだ。
あなたは普段どんな立場で会話相手と言葉を交わしていますか――?
相手が親なら息子、妻なら夫、子供なら父親、同窓生なら旧友、趣味サークル仲間なら遊び仲間、上司なら部下、部下なら上司として……など、相手が変わると立場も変わるはず。
「役割別ビジネス会話」=自分と相手の立場を踏まえた会話
「相手が求める自分の役割」を果たすこと自体を1つの“ビジネス”ととらえると、私たちはどんな会話でも、自分と相手の立場に応じた「役割別ビジネス会話」を交わしていることになる。
とくにビジネス業務上では、上司/部下など求める役割が明確な分、周囲の目もシビアである。だからこそ想像以上の役割を果たせば「デキるヤツ」「もっと一緒に仕事をしたい」と思わせることもできるはずなのだ。
そこで今回の総務特集では、ビジネスシーンにおいて“一目置かせる”ための会話術を役割別に順に紹介する。まず、どんな役割の時も使えるオールマイティな会話術から見ていこう。
「太郎、お酒持ってきなさいよ!」――社長に命令、意表を突く
「仕事のパートナーにも使える恋愛術」や「目的を達成する説得法」など、Biz.IDで連載中の平本あきお氏によると、心理学上では、人は5つの役割に分けることができるという。「厳しい父親」「優しい母親」「冷静な大人」「自由な子供」「従順な子供」である。
1人の人間にはメインの役割と、そのほかの役割がミックスされているという。例えば普段は「厳しい父親」で通っている男性が、目の前で転んだ子供の前で「優しい母親」の顔を出して「大丈夫?」と声をかけたりする――といった具合。
ビジネスシーンでは、「厳しい父親」として社長が言葉をかけると、周囲は「従順な子供」として社長に応える――というように、役割会話が固定化されていることがほとんどだ。これを逆手に取り、ここぞという時には、固定化された役割会話を崩す。すると、普段と違う役割に意表を突かれた相手が「コイツはすごい!」と、一目置くようになるという。
例えばこうだ。普段「従順な子供」に囲まれている社長が、銀座にある老舗(しにせ)のクラブに飲みに行ったとする。ママは行き届いたサービスで社長をもてなす。ところが、打ち解けてきたタイミングで、「太郎、あそこにあるお酒、あなたのでしょ。自分で持ってらっしゃいよ!」と、社長を下の名前で呼び捨てにして命令する。
すると社長は、いきなり「厳しい父親」の顔を出した“失礼な”ママを怒るどころか、「従順な子供」になって、喜んで自分のボトルを取りに席を立つというのだ。こんなふうにして、銀座のママたちは社会的地位が高い男性を“もてなし”、常連にしてしまうという。
普段「優しい母親」で通っている人が怒ると効果テキメンなのは、この意外性のせいなのだ。ビジネスシーンでも、普段通している役割をここぞという時のみ一変させれば、相手に強いインパクトを与えることができるだろう。
単純なほど指差し確認を――立場はさまざま、暗黙の了解はない
また、役割に関わらず気を付けておくべきポイントがある。そう指摘するのは、以前、朝EXPOで初対面の人と打ち解ける糸口について講演した桂小春団治師匠。
師匠によると、ビジネスではさまざまな立場の人が集まって仕事を成立させているため、暗黙の了解は通じないという認識で、「指差し、復唱、ポイント確認」を、常に心がけるべきだというのだ。
例えば、テレビの撮影でカメラマンが機材を持ち、これをアシスタントが下から支えている場合、「持った?」「はい、持ちました」「離すよ」「はい、大丈夫です」といった具合に、カメラマンとアシスタントは細かな動作ごとに声を掛け合うという。そうしないと、重い機材を落としてケガをしたり、落とした高価な機材を弁償したりするリスクが上がるからだ。
この時、単純な作業ほど「大丈夫だろう」と高をくくり、確認せず仕事を進めてしまいがち。ある程度作業が進んだ段階で、仕事相手と意図が食い違っていた――なんてことを避けるためにも、「単純な作業ほど、口に出して相手に確認した方がいい」(小春団治師匠)
こまめに内容確認をしておくと、相手も「ここが伝わっていなかったか」「ここまでできているな」と分かり、状況ごとに情報共有できる。この小さな信頼の積み重ねが、「この人なら任せられる」「また一緒に仕事したい」といった大きな信頼につながるのである。
次回は「年下の部下から年上の上司へ」の会話術を掘り下げよう。
今日の“一目”ポイント
- 人はどんな会話でも、相手が期待する役割で会話をしている。
- 時に普段の役割を崩して、相手の意表を突くと効果的。
- どんな役割でも暗黙の了解はない。単純な作業ほど口に出して確認を。
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