「メガ、ギガって何ですか?」 教え合いの輪を広げる“営業初心者ペア”作戦:「ユニット式営業組織」のススメ(2/3 ページ)
現代は「学習する組織」の時代。営業にとってもそれは例外ではありません。しかし「学習」といっても「えらい先生の教えをありがたく拝聴する」のではなく、現場の社員同士が相互に教え合うことが大事。そのためには初心者同士でペアを組ませることが意外なほど有効でした。
同じレベルの2人で営業に行かせてみたら……
あまりにも知識不足でお先マックラ感ありまくりのA子さんでしたが、その営業所にはA子さんレベルの人がほかにも何人もいたんです。そこでわたしが考えた秘策は、
- A子さんレベルの新人を2人一緒に営業に行かせる
というものでした。
あれ……2人一緒といえば、そもそもこの連載はそういう話でしたよね。2人で行くと冷たく断られない、なぜかよく売れるという「ユニット営業」のススメをずっと書いてきましたけれど、その「2人一緒」というのは、実はこんな「ド初心者同士」でもいいんです。
実際にA子さんレベルの営業マンを2人で行かせたところ、例えばこうなりました。
(1)お互い知識が乏しい者同士なので、知っていることを教え合いやすくなった
いや正直私も予想外だったんですけどね。考えてみればもっともな話です。
A子 ねえねえ、これ知ってる? ○○って。
B子 知らない。何?
A子 さっき吉見さんに聞いたの。××のことなんだって!
B子 あー、そうなんだ!
A子 でもこっちが分かんないの。△△って何だろう? 知ってる?
B子 知ってる知ってる。それはねー、こういうことなの。
(以下略)
こんなシーンは、いかにもありそうじゃないですか? 2人がお互いに知ってることを教え合うと、単純な話、学習スピードが2倍になります。
雲の上の人から学ぶのは難しい
でも、知識レベルに差がありすぎるとこれ、無理なんです。
学生 ねえねえ、教授、これ知ってる? ○○って。
教授 知ってるよ。当然だろ。
……すごく、変でしょう? 知識経験の差がありすぎると、教える、教わる関係が一方的になってしまいます。質問しに行くのにもちょっと勇気がいるし、A子さんのように自分が学んだちょっとした知識を、相手にぶつけて楽しく会話を進めにくい。同レベルの相手のほうが、「教え合いの輪」が双方向でぐるぐる回りやすいのです。
もちろん、そうは言っても2人とも分からないときは教え合えませんけど、そんなときこそ“キョージュ”を頼ればいいんです。2人とも知らないことなら、安心して聞きに行けますよね?
キョージュ! これ教えてください。
わたしは教授じゃないですけど、あるときそんな調子で4人一度に聞きにこられたこともありました。4人の美女に囲まれてええ気持ちやわあ! なんて、冗談言ってる場合じゃないですよ。こ、これはうかつなことは言えないと、答えるほうも真剣になりますからね。
でも、真剣になる価値はあるんです。だって、4人同時に聞いてくれれば、1人ずつ教える手間が省けますからね。そのほか、やってみて分かったメリットがいくつかありました。
(2)人は相互に「教え合う」
人は、自分が学んだことを人に「教えた時」にもっともよく学習できます。同レベルの2人で行かせると、相互に「教え合う」ことができるため、効果的。
(3)同じレベルなら真似しやすい
営業の技術の中には、新人しか使えないもの、逆にベテランでないと無理なものなど、使う人を選ぶものがいくつもあります。同じレベルで一緒に行くと、当然同じレベルの技が中心になるので、真似がしやすくなります。
(4)良いところを観察させる
営業所に戻った後ミーティングで、「同行したパートナーのよかったところ」を何か1つ報告させるようにします。本人も気づいていない長所を人に言われて自信がつきます。人間関係も良くなります。また、良いところを観察するので観察眼が育ち、その結果、急速な成長を果たせます。
いやあ、すごいですね。いいことづくめじゃないですか。しかもわたしがいちいち全部教えなくてもよかったんです。わたしがしたのは、「成長できる環境を作った」だけ。その1つが「同じレベルの新人2人で営業に行かせる」という方法でした。そうすれば数カ月である程度結果を出せるようになるだろうと期待してとった方法でしたが、実際には数週間でトークが安定し、順調に契約が取れるようになりました。
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