効率的な経営で「サービス残業」の根絶を:労働基準法改正! 残業時間を削減せよ
4月から労働基準法の改正で、残業代の割増率が引き上げられました。大企業はもちろん、中小企業も対応が迫られています。まず最初は、労働時間の把握から始めてみましょう。
誠 Biz.ID編集部より
労働基準法の改正により、残業代の割増率が現行の25%を50%に引き上げられました。大企業はもちろん、当面は適用されない中小企業も、遅かれ早かれ対応が必須。4月の総務特集は残業時間の削減をテーマに進めていきます。
厚生労働省は2009年10月、2008年度に全国の労働基準監督署が賃金不払残業(サービス残業)を是正指導した結果を公表しました。これは2008年度の1年間で賃金不払残業について是正指導し、1企業当たり100万円以上の割増賃金を支払った事案の集計です。
- 是正企業数1553企業(2007年度比175企業減)
- 是正金額196億1351万円(2007年度比約76億円減)
- 対象労働者数18万730人(2007年度比1187人増)
低賃金、長時間労働はさせない
サービス残業のある企業では、低賃金と長時間労働の問題が存在します。つまり、昨今の不況の影響から経営状態が悪化すると、薄利多売で利益の出しがたい仕事を長時間労働でこなす企業が増えてきます。
サービス残業の問題は、単に労働に対する賃金の支払いが不足しているというだけではなく、労働者へ過重労働を強いることが問題だとも言えます。下図の厚生労働省の集計では、過労死として労災に認定された件数が、2007年度に392件となっており、相変わらず過重労働による健康障害が多く発生していることが分かります。
必ず見つかるサービス残業――労働時間を適正に把握する
サービス残業は、タイムカードの不正な打刻などでごまかせません。労働基準監督署は、労働者のパソコンのメールの送受信や、ログイン記録などから労働時間を推測します。仕事の痕跡はさまざまな形で残るのです。
では、サービス残業は誰がさせているのか。経営者からは「残業をしないように日頃から注意しています」という話を聞きますが、仕事が間に合わないとき、労働者は自ら進んでサービス残業をしてしまいます。こういう場合も黙示の指示(暗黙のうちに指示していた)と見なされ、経営者には時間外労働の賃金支払い義務が生じると考えるべきでしょう。
経営者には、労働時間を適正に把握し、適切に管理する責任があります。2001年、厚生労働省は労働時間を適正に把握するための基準を、およそ次のように定めています。
- 適用の範囲:まず、労働時間管理が義務付けられる労働者とは、管理監督者やみなし労働時間制が適用される労働者を除くすべての労働者です。ただし、管理監督者などは労働基準法では除外されても、健康確保をはかる必要から労働時間管理を行う責任があるとされています。
- 講ずべき措置:始業・終業時刻の原則的な把握方法はタイムカードなどの記録を基礎とし、自己申告の場合は以下の措置を講ずるべきとしています。
- 事前に労働者に十分な説明を行うこと
- 実際の労働時間と合致しているか、必要に応じて実態調査すること
- 適正な申告を阻害する目的で時間外労働の上限を設けるなどをしないこと
企業が正しく残業代を支払わないのは、労働基準法の定める労働時間や割増賃金の計算方法が難しすぎること、また、給与計算に手間が掛かることもあります。しかし、長時間残業抑制などを目的とし、今年4月から労働基準法が改正され時間外労働の取り扱いが一層複雑になります。企業には、労働時間と賃金のより賢い管理方法が求められます。
『月刊総務』2010年1月号 総務の引き出し/労務管理「効率的な経営で『サービス残業』の根絶を」より
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