部下の“やる気”を削いでいるのは、誰か:田中淳子のあっぱれ上司!(2/3 ページ)
上司があまりに「上司然」としていて、会社で動いていることを部下に全く開示しないケースがある。もちろん最大級の機密であれば仕方ないが、そうでもないような内容で、部下にも関係あることをちっとも話さないのはどうなのか。
ある協力会社のベテラン
こんな例もある。
10歳くらい年上の協力会社の人が、リーダーから見るとあきらかに主体性をなくしており、指示待ち状態に陥っていたそうだ。「その人は年上のベテランで、知識もスキルもボクより高いのだから、もっと積極的に動いてほしいと思うんだけど、協力会社という立場で遠慮があるのか、それとも、やる気をなくしているのか、指示したことしかしてくれないし、困るんですよね」とリーダーは嘆いていた。
ある日、その協力会社の人に改めて仕事の全体像を説明する機会を設けてみた。
「いまさらなんですが、再度、このプロジェクトの全体像を説明しますね」とホワイトボードに図を描きながら「今のフェーズはここです。利害関係者はこれだけいます」といった概観を示してみた。
その上で「今週お願いしたいタスクはこれ」と伝えた。すると、この「やる気がなく主体性もない」と感じていた協力会社のベテランは突然、こう言ったそうだ。
「私がAの部分を担当するってことですが、そうなると、BとCも関係しますよね。よければ、BとCまでまとめて考えた上で担当しますけど、やってもいいですか?」
リーダーはビックリし、「え? そこまでお願いしても大丈夫ですか?」と問い返した。
「ええ、もちろんです。任せてもらえるならやりますけど」
「じゃ、お願いします」
「それと、ついでに1ついいですか? A、B、Cの全部を私が担当したほうが効率はいいと思うので任せてもらいたいんですけど、Xのことも考慮しておいたほうがいいと思います」
Xへの考慮というのは、リーダー自身が気づいていなかった部分だった。「さすが、ベテランだなあ」とこのリーダーは素直に礼を言った。
私がこの話を聞いた時、リーダーは、こうも言った。
「相手のことを、ベテランなのにやる気も主体性もなく、指示待ちで困るな」と思っていたけど、指示待ち状態にさせていたのはボクのほうだったように思います。全体像を伝え、どうしたらいいのか、一緒に考えてもらえる環境を整えたら、協力会社の立場であっても意見や考えを言ってくれるものだと分かりました。それに自分が気づいていなかった部分まで考えを巡らせてくれて、さすがベテランだなあ、と。もっと頼っていいんだな、と感じたのです」
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