フリーランスが増えた背景は?:フリーランスを目指す前に(3/3 ページ)
急速なITの進化、そして社会環境の変化により、オフィスを持たずにどこでも仕事ができる新しい働き方が増えている。“フリーランス”と呼ばれるその働き方を考えてみよう。
会社という“場所”は、必要なのか?
ではここで、「仕事」に視点を戻してみよう。
会社に勤務していることを想像してみてほしい。仕事をするのに、何が必要になっているだろうか? おそらく多くの人は、以下のものにとどまるのではないか。
- PC
- インターネット接続
- プリンタ
- 携帯電話、スマートフォン
- 事務用品
この中で、持ち歩けないものは何だろう? それは、「インターネット接続」と「プリンタ」である。プリンタはインクジェットなど小型機なら持ち歩けなくもないが、多くの企業では大型の複合機を使用している。
では、さらに質問を変えてみよう。
この中で自宅にないものは何だろうか? 一部の人はプリンタを持っていないかもしれないが、それ以外には全てのものが自宅でそろうはずだ。
プリンタについては、今やコンビニエンスストアのコピー機にUSBを挿せば印刷ができる。中にはインターネット経由で印刷を行えるサービスだってある。コンビニエンスストアなんて至るところにあるのだから、「プリンタがない」なんて問題はすぐに解消されるだろう。
インターネット接続については、今やカフェや駅などに公衆無線LANが整備されている。事前にインターネットにつながる場所さえ知っていれば、あとはそこに行くだけでインターネット問題も解消だ。
もしコンビニエンスストアがなかったり、インターネットにつながるカフェがなかったりしても、それなら自宅に帰れば良い。インターネットはかなり多用すると思うが、プリンタについてはある程度予定を立てておけば、そう頻繁に必要になるものでもないだろう。コストを投下できるのであれば、インターネットについてはモバイルルータを使うという方法もある。このモバイルルータについては、次回以降で紹介しよう。
そう考えると、1つの疑問が生まれてくる。
「会社という“場所”は、必要なのか?」
そう、これがノマドを生むことにつながるのだ。
仕事をするのに、わざわざ決まった場所を用意する必要はない。しかし会社に勤めている以上は、会社に出勤しなければならない。このジレンマに悩んだ挙げ句、フリーランスやSOHO、あるいは法人などとして独立する道を選び、その働き方としてノマドワーキングを選択していく。ITの進化がなければ、ノマドなんていう働き方が一般化することはなかっただろう。
集中連載『フリーランスを目指す前に』について
本連載は2012年12月14日に発売した『フリーランスを目指す前に読む本』(三河賢文著、豊作プロジェクト刊)から一部抜粋しています。
オフィスを持たずに、どこでも仕事ができる新しい働き方。会社員の中にも、外出先で空き時間にカフェなどから仕事をしていることがある。しかしこの働き方のほとんどは、いわゆるフリーランスワーカー達だ。近年は働き方が多様化しており、こうしたフリーランスが増えている。
このような働き方が生まれた理由の1つは、やはりITの進化だろう。PCなどの電子機器やインターネットサービスが普及して、働くことに自由度が広がったのだ。もう1つは、社会環境の変化である。長引く不況に企業は苦しみ、そしてその企業に対して人々が不安不満を抱く。こうした心理的変化が、「会社を飛び出す」という選択肢につながっていくのである。
しかし近年、どうも「フリーランス」「ノマド」という言葉だけが独り歩きしているように思える。こうした働き方をする人々に対して否定的な見方を示す人も増えているし、どうやら働き方に伴う“品格”ともいえるものが崩れてしまっているのではないだろうか。
私自身そうした働き方を実践する身として、この働き方は月並みだが素晴らしいと思う。しかし万人にとってではなく、やはりメリットがあればデメリットもある。これから起業・独立あるいは副業などでノマドを目指す人には、こうした働き方の持つ「本質」について良く理解しておいてほしい。その上で、1つ働き方の選択肢として、「フリーランス」を目指すべきかを考えてもらいたい。
著者紹介:三河賢文(みかわ・まさふみ)
1983年岩手県生まれ、宮城県育ち。人材コンサルティング会社、Web関連会社での勤務を経て、2010年6月にナレッジ・リンクスとして独立。「時間の自由」を第一としたワークスタイルを実践中。多くのSOHOやフリーランスワーカーとパートナー関係を持ち、業務機会の提供を行っている。プライベートでは2人の子どもを持ち、マラソンやトライアスロンにも挑戦。ITやビジネス全般を中心とした執筆活動も行う。
- Twitter:Masafumi_m
- ブログ:葛飾から自由を届ける!起業家の挑戦記
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