「あの人とは仕事したくない」――そう思われないために、フリーの人に必要なマナーとは?:フリーランスを目指す前に
フリーランスで仕事を続けていこうと思うのであれば、基本的なビジネスマナーは身につけておく必要がある。「あの人とは、もう仕事をしたくない」。そう思われてしまったら、終わりなのだから。
集中連載『フリーランスを目指す前に』について
本連載は2012年12月14日に発売した『フリーランスを目指す前に読む本』(三河賢文著、豊作プロジェクト刊)から一部抜粋しています。
オフィスを持たずに、どこでも仕事ができる新しい働き方。会社員の中にも、外出先で空き時間にカフェなどから仕事をしていることがある。しかしこの働き方のほとんどは、いわゆるフリーランスワーカー達だ。近年は働き方が多様化しており、こうしたフリーランスが増えている。
このような働き方が生まれた理由の1つは、やはりITの進化だろう。PCなどの電子機器やインターネットサービスが普及して、働くことに自由度が広がったのだ。もう1つは、社会環境の変化である。長引く不況に企業は苦しみ、そしてその企業に対して人々が不安不満を抱く。こうした心理的変化が、「会社を飛び出す」という選択肢につながっていくのである。
しかし近年、どうも「フリーランス」「ノマド」という言葉だけが独り歩きしているように思える。こうした働き方をする人々に対して否定的な見方を示す人も増えているし、どうやら働き方に伴う“品格”ともいえるものが崩れてしまっているのではないだろうか。
私自身そうした働き方を実践する身として、この働き方は月並みだが素晴らしいと思う。しかし万人にとってではなく、やはりメリットがあればデメリットもある。これから起業・独立あるいは副業などでノマドを目指す人には、こうした働き方の持つ「本質」について良く理解しておいてほしい。その上で、1つ働き方の選択肢として、「フリーランス」を目指すべきかを考えてもらいたい。
ノマドワーカーは、社会の中でそこまで歓迎される存在ではないのかもしれない。私もその中の1人として日々仕事をしているわけだが、周囲からよく否定的な意見も聞く。その多くは「マナー」に関することだ。
ビジネスパーソンとしてのマナー
例えばカフェでコーヒー1杯を頼み、何時間も居座って仕事をしている。客として訪れた場所でそんな人がいたら、どうだろうか? 特に電源の取れるカフェだと、コンセント脇のテーブルには常に同じ人が座っているようなこともある。
勘違いしないでほしいのだが、カフェは誰もが利用できる店舗であって、あなたのオフィスではない。いつも利用しているとまるで自分の場所かのように錯覚するのだが、それは大きな間違いだ。ましてコーヒー1杯の単価を考えれば、何時間も居座るのは店に対しても失礼極まりない。あなたがカフェで仕事をしているように、カフェもまたそのコーヒー代金で経営を成り立たせているのだから。常に1席を占拠するということは、その分だけお客さんが入れないということなのだ。
もちろん、カフェで仕事をするなとは言わない。常識などと言っても「何が常識なのか」は私などが語れるはずもないが、それでも常識を考えて使用してほしいのだ。他にも大声で電話をしたり、座っていない隣の席に荷物を置いたり。フリーランスだからといって、何もかも自由なわけではないことを心得て頂きたい。
また仕事上のやりとりでも、マナーの悪いノマドワーカーは多い。これはノマドスタイルではないフリーランスの人々にも共通することだと思うが、少し例を挙げてみよう。
- 契約書への押印がサインもしくはシャチハタ
- 初対面でもタメ口
- ヘアスタイルや服装が汚らしい
- 平気で約束に遅れてくる、あるいはドタキャンがある
- 納期を守らない
など、実にさまざまな声が聞かれる。上記について不快に思った人がいたら申し訳ないが、これは実際に言われていることだ。私も仕事をする中で、同じようなことを感じたことはある(もちろん、私も何かしら思われていることがあるかもしれないが……気をつけよう)。
特にマナーで指摘を受けるケースが多いのは、社会人になってすぐにフリーとして働き始めた人である。社会人としてのマナーを学ぶ場がなかったのだから、仕方ないのかもしれない。しかし自分でビジネスをするのであれば「仕方ない」では済まないのだ。
契約関係などビジネスに取り組む中で発生するさまざまな業務については、今やインターネットで調べればヒントがたくさん見つかる。書店に行っても、ビジネスマナーに関する書籍は山のように見つかるだろう。誰が決めたとも知れない「ビジネスマナー」を強制しようとは思わないが、フリーやノマドとして仕事を続けていこうと思うのであれば、そういった基本的なマナーは身に付けておくことをお勧めする。そうでないと、自分の気が付かないところでビジネスチャンスを失ってしまうことさえあるだろう。
「あの人とは、もう仕事をしたくない」
そう思われてしまったら、終わりなのだから。
著者紹介:三河賢文(みかわ・まさふみ)
1983年岩手県生まれ、宮城県育ち。人材コンサルティング会社、Web関連会社での勤務を経て、2010年6月にナレッジ・リンクスとして独立。「時間の自由」を第一としたワークスタイルを実践中。多くのSOHOやフリーランスワーカーとパートナー関係を持ち、業務機会の提供を行っている。プライベートでは2人の子どもを持ち、マラソンやトライアスロンにも挑戦。ITやビジネス全般を中心とした執筆活動も行う。
- Twitter:Masafumi_m
- ブログ:葛飾から自由を届ける!起業家の挑戦記
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