部下を“その気にさせる”トーク術:田中淳子の人間関係に効く“サプリ”(1/2 ページ)
部下に仕事を頼むとき、どうせなら気持ちよく、やる気になって引き受けてもらいたいもの。ちょっとした一工夫で、部下のやる気を引き出す頼み方ができる。
田中淳子の人間関係に効く“サプリ”:
職場のコミュニケーションに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。「上司にこんなことを言ったら怒られるかもしれない」「部下には気をつかってしまうし」――。
本コラムでは、職場で役立つコミュニケーション術をご紹介します。具体例を挙げながら「なるほど! こういうやり方があるのか」「これなら自分でもできるかもしれない」と感じてもらえるよう、筆者が見聞きした出来事をちりばめています。
明日から……ではなく、いますぐに試すことができる「コミュニケーションのヒント」をご紹介しましょう。
先日、甥っ子が我が家に遊びに来た時のこと。その日4歳になった彼が、一人で手を洗えるようになっているのに驚き、感動しながらそっと様子を窺っていたら、突然振り向いて甥っ子がこう言った。
「おばちゃん、泡のハンドソープがあって、うれしいでしょ?」
どうやら彼は、ポンプを押すとノズルから泡状の石鹸がにゅるにゅる出てくるハンドソープを我が家で初めて見て、うらやましいと思ったようだ。それを「いいなあー」とか「ぼくのうちにはない」とか、あるいは、その場にいた母親(私の妹)に対して「うちにも泡のハンドソープ買って」などと言うわけではなく、「おばちゃん、泡のハンドソープがあって、うれしいでしょ?」と私の気持ちに自分の想いを代弁させるようなうまい言い方をしたのであった。
「うれしいでしょう?」という言い方には、彼の「いいなぁー」という気持ちが十分含まれていて、思わず、心の中で、「そんなに憧れるなら、おばちゃんが、今度泡のハンドソープをお土産に持っていくからね」と思ってしまった。
このできごとからふと思い出したのは、ものの言い方が上手な人と、そうではない人というのがいるなぁ、ということである。
もうずいぶん前の話になるが、あるとき20代のエンジニアたちが「ちょっと聴いてくださいよ」と私に愚痴ったことがあった。彼らが言うには、上司のXさんが仕事を割り振る際に、こんないい方をするそうだ。
「○○の作業、A君、やってみる? 俺がやったほうが上手くはできるけど、せっかくの機会だからやってみる?」
「B君、××を担当してくれる? 難しいから無理かもしれないけど、自分の勉強のためにやってみたら?」
こういう言い方をされると、つい「どうせ上司のXさんほどの技術力はないですよー」「どうせ僕は頼りないですよー」とふてくされてしまうというのだ。
上司Xさんのことも少しは知っていたので、彼らしいなあ、と苦笑いした。Xさんは、非常に技術力のあるエンジニアからマネージャになった人で、技術面において部下たちを信用できなかったのだろうと容易に想像がついたからだ。しかし、上司が部下に何かを任せようという時、少なくとも部下のやる気を刺激するような言い方に対して最大限の配慮をすべきことを彼は忘れ、つい本音を言ってしまったに違いない。
こういう時、言い方には工夫が必要だ。
「A君、○○の作業を担当してもらえないかなぁ。A君自身の勉強にもなると思うし、いい経験を積めると思うから。困ったことがあればいつでもサポートするし」
「B君、少々ストレッチなレベルの仕事にはなるだろうけれど、B君ならできると思うので挑戦してみない?」
こんな風に言われれば、AさんもBさんも懸命に頑張るのではないかと思う。
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