かつて優秀だったはずの人がなぜ平凡化していくのか:未来の人事を見てみよう(2/3 ページ)
ポテンシャルが高く、入社当時は「優秀だったはず」なのに、数年後は平凡な社員になっている――。このような人々をハイポテンシャルのまま成長させるにはどうしたらよいのでしょうか? ある企業の事例を基に探っていきます。
同じ「環境」だとどうなる?
その3年後のことです。
5年目の若手社員の研修、人材アセスメントを再び行うことになりました。この年の対象者は入社時点ではまだ会社が統合していませんでしたが、入社後間もなくして会社の仕組みや業務プロセス、教育研修体系が統合される過程を経験してきた人たちです。ちなみに、統合新会社の制度や仕組み、システムは主に旧A社のものに統合されました。
人材アセスメントの結果は、3年前の結果と違って、旧A社と旧B社でほぼ同じ分布となりました(下図)。この結果も想定通りではありましたが、ここまで同じような分布になるとは意外でした。
入社時の会社が別なので、ポテンシャルには差があるのは当然です。しかし、業務プロセスやマネジメントシステム、人事・教育研修体系などの「環境」をそろえたことが(わずか数年でも)能力開発に大きな影響を与えていることが伺えます。
成長するのに年齢は障害になりうるか?
もう少し上の年代の場合はどうでしょうか。
この会社では統合初年度に、マネジャー候補層(30代前半)と部長候補層(40代)に対してもアセスメントを実施しています。マネジャー候補層のアセスメントの結果は、5年目社員の傾向とほとんど変わりませんでした。
ところが、部長候補層で実施したアセスメントは少し変わった傾向を示します。
集団の平均で見れば旧A社が高く、旧B社が低いのは他の階層と同じでしたが、分布の広がりが大きくなり、かつニ山分布になっていることが分かります(図はかなりデフォルメしていますが、大まかな分布の傾向を示しています)。また、大多数が分布している「山」に着目すると、旧A社と旧B社のスコアは実はあまり変わりません。
ここからは推測ですが、旧A社の方が元々のポテンシャルと育成環境に優れていたと仮定した場合、旧A社で本当はもっと優秀だったはずの人が、平凡な(普通の)レベルにとどまってしまっている可能性があるということです。
また、マネジャーを経験するという「環境」は、ポテンシャルと環境の面で恵まれていなかった旧B社の社員であっても、一定レベルまで能力を引き上げている、という見方もできます。
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