協調性がなかったから、独立した:開米のリアリスト思考室
独立した人に理由を聞くと「やりたいことがあった。会社の中ではできないことだった。好きなことを仕事にしていきたかった」といった答えが返ってくるもの。しかし先日会った人からは意外な言葉が返ってきたのです。
こんにちは。文書作成能力向上研修を手掛ける開米です。先日、ある飲み会にてこんな話題が出ました。
開米 Sさんはもともと独立しようと思っていたんですか?
Sさん 思っていましたね。
開米 そう考えるようになったきっかけや理由はありますか?
Sさん 1つ挙げるなら、協調性がなかったから、ですね。
開米 えーっ!! 本当にそれが理由?
Sさん 本当ですよ。
思わずコーヒーを吹き……こそしなかったものの、意外な答えだったので驚きました。独立を考えた理由、というと、
「やりたいことがあった。会社の中ではできないことだった。好きなことを仕事にしていきたかった」
のようなものを聞くことが多いのに、協調性がないから独立志向、とはまた「お前は何を言っているんだ。人間としてダメな奴だな。そんなんで独立したってやっていけるわけがない。考え直せ」といったありがたい説教がどこかから飛んできそうです。
とはいえ。でも。しかし。実際のところ、これってかなり多いんじゃないかと思いますが、どうでしょう? それで成功するかどうかは別にして。
というのは、実は私もそうなんです。自慢じゃないですが今まで「協調性」があると言われたことはありません。逆ならよく言われます。
ですので、Sさんの返事を聞いたとき「ああ、そうか。そういう発想で独立志向したっていいんだなあ……」と、しみじみ思ってしまいました。
ただ、「協調性」といっても場面によって違う性質を指して使われるので、区別はしておきたいです。
これに関してちょっと面白かった記事を2つ紹介しましょう。
2つとも日経ビジネスオンラインの記事です。会員登録(無料)していないと全文は読めませんので、興味のある方は登録してお読みください。
実はこの2本の記事の中に2種類の異なる「協調性」を象徴するフレーズがありました。
1つ目の記事では、「体育会出身のやつらは「めんどくさくない」んだよね!!」というもの。つまり、先輩の言うことには基本的に無条件で従うという種類の行動特性です。「協調性」という言葉がこのイメージで使われる場合も確かにあります。基本的に上下関係のある場での協調性ですね。
一方、2本目の記事で述べている協調性は「利害の対立した者同士が、おだやかに問題を解決しようとする姿勢」という意味です。こちらは上下関係がない場での話であり、なんとかwin-winな落としどころを探るためのめんどくさい交渉をして、お互いハッピーになりましょう、というそういう姿勢のことです。
スパッと一言でいうなら、めんどくさくない協調性対めんどくさいことを厭わぬ協調性の違いでしょうか。
こうしてみると私には確かに前者の協調性はないなあ、と思うのです。
ところが、日本の社会を構成する小集団(学校、部活、会社等々)は前者の「めんどくさくない協調性」を前提として作られている場合が多々あり、そういう場ではどうしてもこういう人間は異分子であり、居心地が悪く、「めんどくさがられ」やすいようです。その結果、社長と対立をして独立せざるを得なくなったわけですが……。
こういう性格だから仕方がないよね、と、今はそんなふうに思っています。世の中にはこういう人間もいたほうがどこかで役に立つのでしょう。
例えば、私がもし「めんどくさくない協調性」のある人間だったら、原発事故後3カ月しか経ってない時期から原子力論考を書き始めてその第1回で「原子力は向こう100年は必要だ」なんてことは書かなかったことでしょう。
そして、「放射性物質による健康被害なんてどうせ起きないから心配するな」という趣旨の論考を書くこともなかったと思います。それほど多くはないにしても、このことが役に立った、と言ってくれた人が確かにいるので、まあそれでいいじゃないか、と、今はそう考えています。
※この記事は、誠ブログの開米のリアリスト思考室:めんどくさくない協調性と、めんどくさいことを厭わぬ協調性より転載、編集しています。
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