部下に「やる気」を出させるための条件:本当の人材育成
業務満足度の高さ、つまり仕事に対する「やる気」は生産性に大きく影響します。今回はこのやる気を引き出す方法をマズローの欲求段階説に当てはめて考えてみましょう。
一般的に各プレーヤーの仕事における生産性は職務満足の関数といわれています。一方で、生産性の高さが職務満足度に影響を及ぼすともいわれています。今回は、この業務満足度にフォーカスをして仕事の「やる気」について考えていきます。
まずはその前に、有名なマズローの「欲求段階説」を押さえなければなりません。
マズローの欲求段階説とは
米国の心理学者、アブラハム・マズロー氏は、人間には以下に挙げる5つの基本的欲求があると提唱しました。よくピラミッド型の図で表現されています。
(1)生理的欲求:空腹や渇きを満たすなど生きていくために必要な最低限の欲求
(2)安全の欲求:物理的・精神的な障害から身を護る欲求
(3)愛(社会的)の欲求:愛情や帰属意識、受容、友情を求める欲求
(4)尊敬の欲求:自尊心、自律心、地位、表彰などで他者から承認される欲求
(5)自己実現の欲求:成長、自己の潜在能力を達成したいといった欲求
ここでマズローは、この5つの欲求をさらに大きく2つに分類しています。
低位な欲求:(1)生理的欲求、(2)安全の欲求
低位な欲求は外的によって満たされます。
高位な欲求:(3)愛の欲求、(4)尊敬の欲求、(5)自己実現の欲求
高位な欲求は内的によって満たされます。
このことを踏まえて、次の項目を考えてみます。
ハーズバーグの二要因理論(動機付け要因・衛生要因理論)
フレデリック・ハーズバーグ ハーズバーグが提唱した「二要因理論」の考え方を押さえるためには、「満足」と「不満足」が表/裏の関係ではないことがミソです。つまり、「満足」の反対は「不満足」ではなく「満足ではない」であり、「不満足」の反対は「満足」ではなく「不満はない」ということです。
これを踏まえて、二要因理論を考えていきます。ハーズバーグは、仕事において職務態度に影響を及ぼすものを、衛生要因と動機付け要因に分けました。
衛生要因は、管理者の質、給与、会社の考え方、作業条件、対人関係、職務保障といった外的な要因に期するもの。動機付け要因は、昇進、個人的成長の機会、表彰、達成といった内的な要因に期するもです。
衛生要因は、もしそれらが満たされていなければ不満を感じるが、満たされている場合は、不満はないが満足の要因にはなりません。一方、動機付け要因は、もしそれらが満たされていれば満足を感じ、満たされていなければ満足を感じない、とうことになります。言い換えると、衛生要因は満たされていないと退職の引き金になるけど、かと言って、衛生要因が満たされるように環境を整備しても、モチベーションが上がり生産性が高まるとはいえないということになります。もし、モチベーションを上げてもらい生産性を高めるためには、動機付け要因を満たす環境を整備する必要があります。
欲求段階説と二要因理論の関係
衛生要因をマズローの欲求段階説に照らし合わせると、(1)(2)(3)などが該当します。動機付け要因は(4)(5)が該当します。ここで、マズローは欲求段階説でこのように述べています。「低次な欲求がある程度満たされないと高次な欲求は起こらない」。このことを踏まえると、いくら、生産性を高めるために動機付け要因となる環境を整備しても、衛生要因を満たす環境がなければ動機付け要因は起こってこないということになります。
人のモチベーションを上げるために成果報酬を導入するところがありますが、仕事環境がギスギスして、鬼のようなマネジャーの監視のもとでは全くモチベーションが上がらないということが分かります。最悪、早期離職にもつながっていくでしょう。
一方、よくコーチングなどで承認が必要といわれ、マネジャーがいくら承認をしてモチベーションが上がらない原因は衛生要因を満たす環境が整っていない(会社の方針が不鮮明、人間関係等)可能性があります。ですから、モチベーションを上げるためには、まず、衛生要因を満たすという前提のもとで動機付け要因を満たす環境作りを考えなければなりません。
部下の動機付けに悩ませている経営者やマネジャーの方は、一度、2つの要因を見つめなおしてみてはいかがでしょうか?
※この記事は、誠ブログの本当の人材育成:研修の現場から:「やる気」をださせるための条件より転載、編集しています。
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