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新入社員をやる気にさせるひと工夫ひといくNow! 人材育成の今とこれから

新年度が始まって数週間は、新入社員研修をしている企業がほとんどです。外部講師などを招いている場合、そのような工夫で受講者のやる気を引き出しているのでしょうか?

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誠ブログ

 4月1日は、多くの企業が新入社員を迎え入れました。2013年度の新入社員は「ロボット掃除機型」だそうです。段差があると(受け入れ環境が整っていない)と動けなくなったり、ひっくり返ったりしてしまうので「受け入れる側が環境を整えておきましょう」ということのようです。

 果たしてできるんだろうか……と思いつつも、新入社員研修で講義や指導、あるいは職場でOJTリーダーの立場で後輩を指導する人に向けて、研修講師が新入社員をやる気にさせるためにしているひと工夫を紹介します。

社長訓示を把握する

 新入社員の入社式では、社長が新入社員に向けて「訓示」を伝えます。訓示とは、次のような意味があるそうです。

 教え示すこと。また、教え示す事柄。特に、上位の者が下位の者に対して示す執務上の指示や心得。また、その言葉。(日本国語大辞典)

 入社式で伝えられる訓示は、主に次のような構成になっています。

  • あいさつ
  • 自社を取り巻く現状、今後の取り組み課題
  • 新入社員への期待
  • まとめ

 特に4月が新年度の企業であれば、その年の事業の方向性や重点取り組み課題、目標なども合わせて伝えます。よって上司や先輩社員よりも早く、直接、社長からメッセージが伝えられることになります。

 言葉を変えると社長訓示とは、経営者が描く方向性であり、期待する仕事への取り組み姿勢とも言えます。

 このことから新入社員研修などを担当する機会のある研修講師は、必ず社長訓示を把握して研修に臨みます。なお、2013年は「新しいことへ取り組む必要がある。新入社員だからといって臆することはない。アイデア、発想力、行動力があれば、どんどんチャレンジしてほしい。組織に新風を吹き込んでほしい」というニュアンスの訓示が多く見受けられました。

 それでは、社長訓示をどのように新入社員のやる気を引き出すために活用しているのでしょうか? その一例を紹介します。

「社長はどんな話をしていましたか?」と聞く、真の狙い

 外部講師が担当するタイミングは、入社式の翌日〜数週間がほとんどです。そこで「社長はどんな話をしていましたか? 教えてください」と聞くことがよくあります。実はこの質問には、聞く内容以上に次の2つの目的があります。

目的1:気持ちの余裕を把握し、講義の進め方を変える

 入社後しばらくの間は、こちらが想像している以上に新入社員の気持ちに振れ幅があります。環境が大きく変わり緊張感が強い人もいれば、比較的余裕を持って臨んでいる人もいます。この場合、配慮が必要なのは緊張感が強い人です。そのため、社長の訓示に関する質問をしてその緊張度を確認します。

 「頭が真っ白で、あまり理解できなかった」人が全体の割合から見ても多いようであれば、冒頭の講義の進行を少しゆっくり目にしたり、安心できるような話をしたり、気持ちに余裕を持たせるようにしています。

 その理由は、気持ちに余裕ができることで理解が進みやすくなるからです。その結果、良いアウトプットにつながります。仮に気持の余裕がないまま進めると、人間不思議なもので、話以外のこと(話し手の印象や話し方のクセ、自分がその時に関心のあること)に意識が向きます。結果、伝えたことや教えたことが身に付かないことになります。気持ちの余裕をつくるように配慮しているのです。

 反対にちょっと遊び半分だと感じられる場合は、気持ちを引き締める必要があります。その際は、講義の進行を早めて新入社員に発言させたり、実習させたりする場面を多く取り入れます。

 ここでのポイントは、新入社員の状態(話を聞く、学ぶ体制にあるかどうか)を確認することです。その状態をつかむ質問をするのに、社長訓示は非常に効果的なのです。

目的2:意識、興味・関心の幅を把握し、新入社員に合わせてメッセージを伝え直す

 訓示は全体的なメッセージを包含しています。よって抽象度が高く、新入社員にとって「やりがいを感じる」場合と、「非常に重く感じた。自分にできるのだろうか……不安を感じた」場合と、反応が分かれます。

 そこで新入社員の何人かに、どのような点に意識や興味・関心が持てたかを聞き、「前向きに捉えられた」のか、「重荷と感じたのか」を把握します。

 その上で「前向き」に捉えられた人の割合が多いようであれば、「私も社長の訓示の〇〇の部分に、精いっぱい取り組みたいと思う。是非一緒に取り組んで行こう」と伝えます。社長の訓示に対する自身の考えや姿勢を示すことで、組織全体としての一体感が伝わり、新入社員のモチベーションが高まります。

 しかし「重荷を感じた」人の割合が多いようであれば、対応を変えます。「自分も最初は不安を感じていたが、焦らずに1つ1つのことに着実に取り組むことで、徐々にできるようになった。今は不安かもしれないので、まずは研修で学ぶことを1つ1つ確実に身に付けていこう」など、今できることに集中させます。

 実際に研修で取り組む内容に大きな違いが出てくるわけではないのですが、不安や焦りを感じている人がいれば、伝えるメッセージを変え、安心感を持たせます。そうすることで集中度は大きく変わります。

 なお、自身が担当するタイミングが社長講話の直後でなければ、担当する研修の前後のプログラムでのメンバーの状態を把握すると効果的です。難易度の高い実習などの後は、落ち込んでいることもよくあります。その際「できれば社長訓示を思い出してもらい、期待を確認してその状態で訓示を生かすとしたらどう考え行動するか」などの話し合いができれば、更に理想的です。

 プロの研修講師は、限られた時間で、多くの事を伝えたり身に付けさせる必要があるので、自分のペースで進めているように見えるかもしれません。しかし実際は、メンバーの心理面に配慮しながら進めています。講義をスタートして大体15分前後で、全体の傾向をつかみ進めています。

 といっても難しいことをしているわけではなく、紹介したようなアプローチで新入社員の気持ちに意識を向けて、やりとりする時間を少し取っているだけです。それにより、心理的な「段差」を取り除き動きやすくしています。環境を整えるのはなかなか難しいかもしれませんが、気持ちの面での「段差」は少しの工夫で取れそうな気がしませんか? よかったら、試してみてください。

※この記事は、誠ブログ「ひといくNow! -人材育成の今とこれから-:なぜ新入社員は受け身なのか?」より転載、編集しています。

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