“ゆとり世代”の新人を見抜く、基本的な“しつけ”とは:イマドキ新人教育の法則
ますます宇宙人化する若者たち。一人前に育てるには根気よく、文字通り「育てる」気持ちが必要だ。当初は面食らうことも多いので、まずは相手の特性を知ることが大事、と新入社員研修のプロはアドバイスする。
「以前は、あいさつや返事といった当たり前のことはいいから、その上をいく、プレゼンテーション・スキルなどを学ばせたいとの要素が大半でした。しかし数年前から、難しいことはいいから、当たり前のことができるようにしてほしいとの要望が増えています」と、ザ・アールで顧客企業とともに研修プログラムを企画する営業推進部サブマネジャーの羽田敦雄さんは、最近の新入社員研修へのニーズの変化を語る。
例えば、電話を受けるときに「○○社の□□です」と名乗ることに抵抗を感じる若者が増えてきているという。また、内定期間中に懇親会などの知らせをメールで送ると、携帯メールから「Re:出ます」とだけ送ってくることも。自分の名前を書き込んでいないので、誰からの返事なのか、担当者はアドレスで確認しなければならない。これらは携帯電話に慣れきった世代の特徴だろうと、羽田さんは推測する。
「固定電話を使うとき、左手は受話器、右手はペンとメモ……と教えても、どうしても右手が進んでしまう傾向がありますね」(羽田さん)。確かに、社会人としての前提が崩れ始めているようだ。
「内定者のミーティングに遅れてくる、リポートの提出が遅れるなどのケースも増えています。みんな、頭はいいしマニュアルも読んでいますから、採用のときにこういう基本的な“しつけ”までは見抜けません」と、新人社員研修の講師を長年務めてきた専属講師若林郁代さんは、採用担当者の悩みを代弁する。
ザ・アールが2008年に手掛けてきた新人社員研修は146社、1万370人。その結果から同社がまとめた新入社員の傾向を見ると、心当たりのあることが多いのではないだろうか。下記の(1)はポジティブな、(2)はネガティブな傾向である。
新入社員の傾向(1)
- 明るく素直で謙虚。良いことは吸収しようという姿勢がある
- 納得すると学習能力が高く、行動力がある
- 個別アドバイスを求め、「個」で向き合うと成長率が高まる
新入社員の傾向(2)
- 自己発信は得意だが、周りの空気が読めない
- フェース・トゥー・フェースでは言えないが、メールだと表現できる
- 解答を求めがちで、発想力、想像力、理解力に乏しい
- スキルは高いが、立ち居振る舞い、意欲に幼さが残る
「2009年度は、“ゆとり教育”の1期生がそろそろ社会人になる年。大げさなようですが、迎え入れる会社は覚悟しておいた方がいいですよ」と若林さん。“ゆとり教育”とはいうまでもなく、小学生の、学校で受けるストレスを軽くしようと導入された教育制度。学校週休2日で授業時間を減らし、その内容も、例えば円周率は3.14ではなく「3」と切り捨て、総合的な学習の時間を設けて自由な学びを……と、子供の伸び伸びとした学習環境を目指した。“ゆとり教育”世代は、上記の(1)(2)の傾向がさらに強まるとともに、ゆとり時間を塾に振り向けた家庭が多いので「しつけ」はさらに低下。競争心や向上心にも難があるのではないかと羽田さんも推測し、「新入社員ですから、それを受け入れなければなりません。そのためには敵を知れ、ではないんですが、新しい世代の特徴と傾向をよく知っておいた方がいいでしょう」とアドバイスする。
『月刊総務』2009年3月号
「新人社員研修を生かすには上司が本人を受け入れること、関心を持つこと」(P22〜23)より
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