守るべきは、たった7つの価値観――“自由主義のチーム”で圧倒的成功を目指すUZABASEの組織論(2/2 ページ)
仕事とプライベート両方で「幸せ」を追求する―そんな生き方に挑戦している『UZABASE』代表の梅田優祐氏。社員全員が同じように自由に働けて、その上でビジネスで圧倒的な成功を収める組織を目指しているという。この「自由」をベースにした組織論に迫る。
―― 具体的には、どのような価値観なのでしょうか?
梅田氏: こういう価値観です。
- 自由主義でいこう
- 創造性がなければ意味がない
- ユーザーの理想から始める
- スピードで驚かす
- 迷ったら挑戦する道を選ぶ
- 渦中の友を助ける
- 異能は才能
言葉で決めただけだと絵に描いた餅になってしまうので、日常業務に落ちるよう、2012年から「YEARBOOK」という冊子を作るようにしています。内容としては年1回の社内報のようなもので、価値観にひもづく社員それぞれのエピソードが記されています。
守るべきは、たった7つの価値観だけ。
梅田氏: 例えば、「創造性がなければ意味がない」のパートで、私が書いたエピソードだったら、「必死で考えた仕様書を開発者に渡した。僕の考えた仕様書を勝手に無視して、もっと良いモノを開発した」というものがあります。
―― たしかにYEARBOOKのようなものがあると、会社の指針やルールがより身近になって、実際に普段の行動が変わってきそうです。
梅田氏: その通りです。例えば、「渦中の友を助ける」は日々実践されていますね。最近、子どもが生まれたメンバーがいるんですが、“早めに帰って子どもをお風呂に入れたい”という彼の希望を叶えるために、周囲のみんなでサポートする動きを取ったりしています。
―― それはいい。子どもをお風呂に入れてあげるって、人生の中でもほんのわずかな期間しかできないことです。
梅田氏: そうなんですよね。私自身、大きなプレゼンと妻の出産が重なったことがあるんです。妻はそばにいてほしいって言っていたのですが……。でも、売上を立てなければいけないと、妻に謝ってプレゼンのほうを選びました。
で、帰りの新幹線で子どもが生まれたと報告を聞いたとき、ものすごく後悔したんです。「あぁ、この瞬間は二度と来ないんだ」と。それ以来、社員には同じような思いをさせたくないなと決めています。
新しい常識をつくる。
―― そういえば、UZABASEは共同代表という形をとっていますね。
梅田氏: UZABASEは、スティーブ・ジョブズのようなカリスマが引っ張る会社ではないですが、当時のアップルのような、イノベーティブな会社になりたいという思いはあって。
もともとは冗談めかして「創業した3人で力を合わせれば、ジョブズになれるんじゃないか?」と話していたんですよ。この“チーム経営”というのも、周りからものすごく反対されましたね。「教科書的にいけば一番失敗するパターンだ」「仲間割れするからやめておけ」と。
でも、私たちはすごく上手くワークすることができた。3人で「お互いをクビにできる」「何でもオープンに話す」この2つのルールだけは絶対に守ろうと決めたんです。
起業してすぐは品川のマンションで働いていたのですが、ずっと一緒にいるから、しょっちゅうケンカになるんですよね。「トイレの使い方が汚ない!」とか(笑)。些細なことも、ためておくと疑心暗鬼になるから何でも話す。そうすればぜんぶ解消されていく。これは今でも風土として大切にしています。
お互いをクビにできるというルールも、仲良しグループにならず、良い意味でお互いを客観視するという点で非常に重要でした。
―― とても合理的なルールですね。非常に大人なチームのように感じます。
梅田氏: そうかもしれませんね。ただ私としては、小学生・中学生の頃に所属し、本気で取り組んでいた“野球部”の感覚に近いとも感じているんです。
小さい頃、私はとにかく野球少年で、小学生・中学生の頃は、仲間と一緒に、本当に野球ばかりやっていました。が、中学を卒業して野球をやめてからは、高校でも大学でも、何かに夢中になったことはほとんどなかったんです。当時のような感覚を味わうことはもうないだろうと、半ば諦めてもいました。
ところが、起業した途端、自分の好きな仲間たちと寝食を共にして、一つのことに本気で向き合い、アクションを起こす日々が続くわけです。作ったサービスが初めて売れて、みんなで涙を流したりして。まさに“ずっと探していたものがようやく見つかった”という気持ちです。
―― お話を伺っていると、固定観念や既成の考え方にとらわれず、ご自身のやりたいことや感覚を重視し、追求されているように感じます。
梅田氏: そういう部分もあるのかもしれません。
実は、葉山への引越しを決めたとき、ある上場企業の社長からめちゃくちゃ怒られたんです。「葉山に引っ越そうと思っています」と話す私に、「社長業の意味を分かっているのか!」と。
そのとき、「これはもう結果を残すしかないぞ」と思いました。自分たちがやりたいことをやりたいようにやって、ものすごく成長する会社を作るんだ、と。
もちろん過去の歴史として、「社長たるもの365日24時間会社にはりついて、会社のことを考えるべし」という成功パターンがあるのは分かります。
“自由”を謳う会社は少なくありませんが、それで大きく成長した会社が決して多くはないのも事実です。でも、それで私たちが大事にしているものを諦めるべきだとは思いません。UZABASEを何としてでも成功させて、自分たちの考えが間違っていなかったということを証明したい。そんな思いは、確かにありますね。
取材:上田恭平
文:白石勝也
撮影:松尾彰大
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