「リーダーになりたくない」は「仕事をしたくない」という表明と同じ――最強チームの作り方(前編):ベストチーム・オブ・ザ・イヤー(2/2 ページ)
個人からチームへ――課題解決のアプローチが変わる中、リーダーの役割も変わりつつある。支えるリーダーもいれば、細やかな配慮に長けたリーダーもいる。カリスマである必要はない――。こう話すのが明治大学教授の齋藤孝氏だ。
確かに、過去に偉大なリーダーがたくさんいます。カエサルやナポレオン、スティーブ・ジョブズだってそうです。でも誰もが彼らと同じリーダーシップを発揮できるかというと、それは現実的ではありません。リーダーシップにはさまざまな形があり、全員がスティーブ・ジョブズになる必要はありませんから。
カリスマリーダーは、かえってチームでは扱いにくいという面もあるわけです。リーダーでしかいられない人というのは不自由ですから。チームを作るといつもその人がリーダーになりたがるけど、解決すべき課題に対して、そのリーダーの素養が即していない場合もあり得ます。
―― リーダーの自覚をメンバーが持つにはどうすれば。
齋藤氏: 私が学生に教える時は、4人チームを組んで、徐々にリーダーの役割を移り変わらせるようにしています。すると、みんな「こうやればいい」と自発的に動き、リーダーの仕事に慣れてくるんです。
練習すれば、誰もがリーダーの役割を発揮できるよというのが私の提案です。また課題に沿ってチームの中で柔軟にリーダーを配置し、リーダー、サブリーダー、メンバーという3段階を自由に行き来できるような柔軟性を備える。これがポイントですね。
―― 向き、不向きは問題ではなく、誰もがリーダーなのだと。
齋藤氏: ええ、「押しが強い」とか「強気だ」といった気質はまったく関係ありません。リーダーは問題に対するビジョンがあり、何をすべきかが見えてみて、気力・情熱を持ちあわせて言葉に力を込められる――。リーダーに必要な素養はこんなものだと思います。問題に対して当事者意識を持てば、これらは自然と表に出てくるものです。
ビジョンが描けないなら、メンバーととことん語り合ってみよう
―― ビジョンの話が出てきました。実際にリーダーになってみたものの、大きなビジョンが描けないという若手も多いのではないでしょうか。
齋藤氏: ビジョンは自分一人で考えていてもなかなか見えません。ビジョンは話しながら思い描けるものだと思っているんですね。だから僕はメンバーと「対話する」ことをお勧めしています。
「どういうものを作るか」「この先どうすればいいか?」といったことをチームメンバーや社内でとことん語り合ってみる。そうすると、「ビジョンはこうだ」というものが往々にして見えてくるものです。
―― なるほど、確かに何度もメンバーと話をしながら、うまくビジョンを作るリーダーもいます。
齋藤氏: ビジョンを持っている人は、非常によく語るんですね。語っているうちにビジョンが固まってくるということは往々にしてありますし、経験値の高い人と語り合っているとヒントも豊富に出てきますから。
その際は、紙とボールペンを持って、どんどん手書きでメモをしていくことがお勧めです。そうすると、形にした言葉が段々とビジョンに近づいてきますから。
(つづく)
(取材・執筆:藤村能光/撮影:橋本直己)
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