リーダーに「カリスマ性」は不要である:INSIGHT NOW!
リーダーに必要な能力を問うと「カリスマ性」という回答が寄せられる。その気持ちは分からないではないが、若きリーダーが「カリスマ性を身につけよう」と目指すとろくなことがない。
今野誠一(いまの・せいいち)
マングローブ社長。設立以来15年、企業経営にあたりつつ、自らも第一線のコンサルタントとして、主に組織変革コンサルティング、経営幹部教育プログラムや管理職研修のファシリテーション、企業理念構築や経営ビジョン構築ワークショップのファイシリテーションなどを担当している。企業からはもちろん、昨今は自治体などからの要請による組織変革に関する講演も多い。著書に『マングローブが教えてくれた働き方』『稼ぐチームになるためのすぐやるリーダーの仕事術』がある。
先日、某社でのリーダーシップ研修で、リーダーの理想像のセッションをしていたときのことである。あるチームから、リーダーに必要な能力として「カリスマ性」ということが提案された。その気持ちは分からないではないが、若きリーダーが「カリスマ性を身につけよう」と目指すとろくなことがないと僕は思ったので、反対した。
確かにカリスマ性は、偉大なリーダーに不可欠な特性としてリーダーシップに関する文献などで取り上げられている場合もある。カリスマ性の意味は、辞書によると「人々の心を引きつける強い魅力があること。多くの人から支持されること」とある。先天的なものとは思わないが、多分に、偉大な業績を上げた「結果として」カリスマ性が生じてくる場合か、話し方、外見、存在感などに惹きつけられた群衆の存在によって出来上がった「イメージ」のどちらかではないか。
従って、若きリーダーたちが、まずもって目指すべきは「業績を上げられるリーダーになること」に専念することだ。それによって、「結果として」のカリスマ性に期待すべきなのである。
そもそも「カリスマ性」という能力を身につけようと決意しても、何をすれば近づくことができるのかが分からない。「人を引き付ける話し方を身につける」ことが必要なのであれば、カリスマ性と書かずにそう書いて具体的行動として目指すべきである。「多くの人から支持される一貫性のある行動を取る」ことが必要なのであれば、カリスマ性と書かずに、そう書いて具体的行動として目指すべきである。
ドラッカーの指摘によれば、ジョン・F・ケネディは近代の政治家では最もカリスマ性のある大統領の1人だったが、実は彼ほど実績として何もできなかった大統領はいないのだという。逆にドラッカーは、ドワイト・D・アイゼンハワーとハリー・トルーマンについて、カリスマ性という点では、十人並みであったにもかかわらず、きわめて有能なリーダーであったと評している。一方、スターリン、ヒトラー、毛沢東の3人ほどカリスマ的なリーダーはいなかったが、彼らは、史上例のない悪行と苦痛をもたらした存在であった。
リーダーシップにカリスマ性は必要ない。カリスマ性など身につけようと思うのではなく、リーダーとしていかに正しいことを成すかに意識を集中せよ。(今野誠一)
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